神戸で最も私が好きな映画館、神戸シネ・リーブルでの上映であった。
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ずいぶん昔(高校生ぐらいだったか)になるが、トゥルーマン・カポーティの著作「冷血」を私は読んでいて、今回の作品はこの著作を書き上げるまでの苦悩、苦闘を実に見事に描写していた。特にカポーティ役のフィリップ・シーモア・ホフマンがカポーティ自身の喋り方までも再現し、繊細で、傷つき易い「早熟の天才」を演じきっていた。
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小さな田舎町で起こった凄惨な殺人容疑者の一人とのダイアローグは、この作品の核心部分であり、容疑者とカポーティの対話一つ一つに引き込まれてしまう。ノンフィクションのメルクマール的存在「冷血」後のカポーティは、完成された作品を1つも残すことなく、最後には薬物中毒で亡くなった。映画のラストシーンではその悲しみも見事に表現され、もう言うことなし。この秀逸な作品を鑑賞される前に、私は作家が命を削って作り上げた著作「冷血」を一読しておくことをお薦めする。
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