Monday, October 29, 2007

瓢亭:五感を駆使して食する











私はこのブログで、Gourmet的記事に関しては極力避けてきた。
Gourmetというのは独りよがりの所もあるし、このブログの方向性:"Think-Write"(書いて考える)には適していないかなぁ、と考えていたからだ。

しかし先日訪れた「瓢亭」には、その店の入り口を潜った瞬間から、私の思考を活性化させ、ここの料理には五感を研ぎ澄ませて臨まねばという感覚を覚えた。こんな感じを覚えたのは、神戸の伝説のフランス料理店であった「ジャン・ムーラン」以来だろうか。





この感覚というのは、料理&空間(客室=茶室)&ホスピタリティの三重奏から来ていることが、全ての食事を味わった後に波のように私の精神に押し寄せた。このように、五感を駆使して味わう料理には、1999年に食の世界に新しい価値観として登場したアレクサンドル・カマスが提示した"Fooding(= Food + Feeling)"という概念がピッタリ来る。"Fooding"とは、目・鼻・耳などの全ての感覚を使って料理を評価しようというもの。
でもこの概念は今に始まったわけではなく、私が以前このブログでも取り上げた北大路魯山人が実践していた。魯山人自身がトータルプロデュースした「星ヶ岡茶寮」では、料理の味が良いのは当然で、大事なのは食をいかに総合的に楽しめるかであった。400年の歴史と現在の日本で最高ランクの懐石を提供している瓢亭にも魯山人が残した精神が引き継がれているかのようであった。

では、私が五感を駆使して味わった料理の数々をお目にかけよう。





瓢亭の真髄が見られる「半熟鶏卵」








今年初めての松茸:土瓶蒸し&松茸ご飯




この柿が秀逸:完熟した柿が、ゼリーのような感触と、品の良い甘さを醸成していた




瓢亭へ誘ってくれたMr. Hにこの場を借りてThanks a lot!!の気持ちを伝えておこう。

最後に、今回の瓢亭の食のトータルデザインを、北大路魯山人の言葉で纏めておこう。
「味覚と形の美は切っても切れない関係にある」

この魅惑の食の場を体験してみたい方は、次のアクセスマップを参考に。

Friday, October 19, 2007

ファッションショーにおける発想の転換から見えたこと

ちょっと面白い発想の転換に繋がる出来事が私のアンテナに触れた。

先日行われた"The Wind by Issey Miyake with James Dyson"と銘打たれたファッションショーがそれである。



三宅一生とあのサイクロン掃除機で有名なJames Dysonが先日パリで「the wind」というテーマでコラボレーションしたのである。
三宅一生とダイソンの共通項は何かと考えた時、それは常に"Innovation"を追求してきたことにあるのではないか。時代のトレンドにアンチテーゼを投げかけ、その都度様々な批判に晒されながらも力強く前進する。両者にはその強い意志と、凄みみたいなものの存在を感じる。

今回のショーにおけるエッセンスとして、「発想力」、「具現化力」、「創発力」の3つが挙げられると思う。イッセイミヤケとジェームス・ダイソンという二人の著名なInnovative Creatorが織り成した今回のショーでは、一般的には縁遠いと思われる洋服と掃除機、それぞれのコンセプトを噛み砕いて、デザインとエンジニアリングは常に対で共存するという「大文字の」テーマを社会へ発信したことに意義があったのではないか。2つの異質な存在が手を組み、今回で言えば1つのイベントに昇華させようという「発想」。そして、ダイソンがステージセットを担当し、ファッションショーのランウェイを掃除機のホースからイッセイミヤケの服をまとったモデル達が(時代と言う)風に吹かれて登場してくるという「具現化」。ただ単に奇を衒ったということではない、デザインとエンジニアリングの共生というメッセージが発信された「創発」。

私がここで挙げた3つのエッセンスは、現在世界中の様々な業界で行われているコラボレーションのキモになるでしょう。一般的に違った領域同士でのコラボレーションは、違った価値を持ったもの同士が交配することによって、化学反応を起こし、相乗効果を持った商品であったり、サービスが生まれることを期待される。しかし実際には、ただ単に「コラボしました」的な事柄が多いのではないだろうか。
折角知恵を絞ったコラボレーションであっても、シナジー効果を創造する商品やサービスを具現化し、期待以上の着地を見せなければ意味が無い。

今回の出来事は、ビジネス現場にとってもメルクマールとなるのではないだろうか。

Monday, October 08, 2007

"Visionary"2007前半:Creative考

"Visionary"シリーズ第3弾は、ここ数年私の仕事とも密接に関係している"Creative"について考えてみたい。

私は今まで、マネジメントという事柄に多く関わってきた。経営というフィールドでは戦略や戦術をいかにLogicalに説得していくかという、左脳的世界に安住していたように思う。これでは、現在の不確実なビジネス環境において限界がある。そこで今年前半私は、精力的に右脳的世界の住人であるファッション・デザイナー、建築家、プロダクト・デザイナーなどとの対話を繰り返してきた。その対話の中で繰り返し出てきたキーワードが、"Creative"であった。クリエイティブという言葉は、直訳すると「創造的な」と言うことになるのだが、その言葉の奥底には「何が良いモノかを洞察する審美眼的な」というInsight的な意味合いも含まれているように思う。マネジメントとは、ヒト、カネ、モノなどの目利き力を持った形で捉えられるべきである。この私の思考角度にブレがないと感じたのは、今年になってビジネス専門誌などがデザイン思考力などに関する特集を組んだことにも現れているように感じる。

もう1つ"Creative"と関連付けられる事象として挙げられるのが、活気ある都市創造や人材育成のキーワードとして今年になって日本でも注目されるようになってきた"Creative Class"がある。聞き慣れない方もおられるかもしれないが、米国で今から5年前の2002年、都市経済学者のDr. Richard Floridaが"The Rise of the Creative Class"という書を著し、このフレーズが一気に世界的注目を浴びることになる。
簡単に言ってしまうと、Creative Classとは、アイデア、技術、コンテンツの創造で経済成長エンジンを担う人々を指す。そのコアは、科学者、エンジニア、建築家、デザイナー、教育者、アーティスト、ミュージシャン、エンタティナーなどが含まれる。ビジネス、金融、法律、医療、といった自律的に複雑な問題解決を扱うKnowledge Workerも含む。このKnowledge Workerの概念は、2年前に亡くなった現代経営学の発明者:Dr. Peter Druckerが唱えたもので、Dr. Floridaはこの概念も取り込んでいる。今後の世界市場における競争力は、これら"Creative Class"が好んで住むエリアおよび都市から生まれてくるのかも知れない。


では、この"Creative"にいち早く着目し、"Creative"を自分達の中で昇華し、実行している組織があるのかと考えたとき、直ぐに頭に浮かんだのが"IDEO"であった。私はアメリカ留学時期より、この企業の進化をキャッチ・アップしてきた。日本の土壌にはなかなか生まれないであろう、デザイン・コンサルティング・ファーム:IDEOは、あの深澤直人氏が籍を置いていたことでも知られている。この一種特殊なファームは、独特なデザインソリューション手法:より良い顧客経験をデザインするための5つのステップ(Observation、Brainstorming、Rapid Prototyping、Refining、Implementation)を駆使して、"Creative Economy"の先端を走り続けている。このような他者をワクワクさせる企業が、もっと日本にも誕生してもらいたい。
























私は今後も、"Creative"な組織、人、モノをこのブログを通じて紹介したいし、私自身も今以上にデザイン思考力を磨き、真の"Creative Class"の仲間入りができるように精進していきたいと思う、今日この頃である。