Thursday, November 27, 2008

ライブとしての肉体性

最近文芸誌は売れていないと聞く。
私はその時流に反して、よく文芸誌を買う。文芸誌にはタイムリーな批評や小説が掲載されるんで、表現や思考のプロセスに役立つことが多い。
今回、文芸誌の1つ「新潮」を手にしたのだが、驚いたことに付録が付いていた。文芸誌では初のことじゃないかな。1枚のCDが付加されていて、それは著名な批評家・小林秀雄の講演録であった。


私は最近、小林秀雄のテクストを読み返すことが多い。時代が混沌としているからなのか、昭和初期から旺盛に批評活動を行っていた小林秀雄から激動の中での思索という部分を見つけ出そうかとしているように。小林秀雄を読んだことがある人なら理解できると思うのだが、彼のテクストは結構難解なモノもある。

しかし今回、小林の講演というライブの声を聴きながらこのblogを書いていると、気付いたことがある。実に明快な語り口で、不思議なことに彼の思考が頭にダイレクトに入ってくるのだ。活字で読む小林秀雄と、声で聴く小林秀雄とでは、印象が全く違う。かつて小林の友人・青山二郎が、「なぜ喋っている時の面白さが文章に出ないのだ」と表現したことが頷ける。

今回「新潮」の中で、脳科学者・茂木健一郎氏と小林秀雄の孫・白洲信哉氏が対話してるのだが、茂木氏はその中で小林の肉声による講演を聴いて、「批評の肉体性」を感じ取ったと述べている。上手い表現である。
別に文学や評論だけでなく、音楽、アート、陶芸、なども含め、やはり現場に出かけ、聴く・見る・触るというライブ感というものが重要なのだということを再認識させられた。

テクストの中では読み取り難い行間が、小林秀雄の肉声による身体性・肉体性によって、感じ取れた気がする。私は自分のアンテナを鈍化させないために、これからも外部に出て行き、多様な肉体性に触れて行きたい。

Wednesday, November 19, 2008

日本的「美」を考えてみる

先日書店でいつものように書籍を物色していると、1つの面白い書籍に出会った。
それは、平凡社から出ている「日本の美100」。
梅原猛、磯崎新、横尾忠則達選者25人が、1人4つずつ日本の美について挙げて考察する趣向である。


この書のカバーには、これでもかと言うぐらいの満開の桜の写真で飾られている。これも、もちろん「日本の美」の1つではあろう。

「日本の美」という大文字の「美」をこの本は示そうと試みてはいるが、やはりそこに掲載されている「美」は多様なモノ、事象、思想の断片を寄せ集めたに過ぎないことは仕方がないことなのかもしれない。「日本の美」と限定はしてみても、個々人が思い浮かべる「美」は人それぞれ違うモノになるのは当然である。

では、私自信にとっての「日本の美」とはなんだろうかと、考えてみた。
昨年、伊藤若冲の代表作「動植綵絵」が、「釈迦三尊像」と共に展示されるという秀逸な展覧会へ足を運んだ。会場となったのは、京都・相国寺。120年ぶりの代表作同士の遭遇に立ち会うことができ、漠然とではあるが、「ああっ、これは本当に美しい」と体感した。特に、若冲の描いた「動植綵絵」は、何とも表現できないタッチ、書き込み、繊細さ、線の躍動感に満ちていた。私の主観ではあるが、今まで鑑賞してきたどの絵画よりも私は魅了されたのだ。




しかし、これが私にとっての「日本の美か?」と問われると、ちょっと待てよと思ってしまう。青山二郎がその著作「眼の哲学 利休伝ノート」の中で述べた千利休の飽くなき美を追究する思想にも共感してしまう。北大路魯山人が追求した書、陶芸、美食を統合した姿勢も「日本の美」の1つではないのか。


こう考えてくると、やはり私はあのフレーズを想い出してしまう。
そのフレーズとは、批評という体系を日本で確立させた小林秀雄の「当麻」(「モオツァルト・無常という事」所収)という短いテキストの中にある。能の体系者・世阿弥が美というものをどういう風に考えたかを表現したフレーズ、「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」。


小林はこのフレーズで「美」というものは、人それぞれが思い描く美しい建築物、自然、絵画、などがそこにあるだけだと。だから、「日本の美」のように大上段に構えて、一言で表現したり、選択することはできないのだと。

皆さんにとって、「日本の美」と何ですか?

Tuesday, November 18, 2008

Obama Acceptance Speechから聞こえる豊穣な英語表現

オバマ時期アメリカ大統領の勝利宣言スピーチは、久しぶりに私の気持ちを高ぶらせた。
それほど、今回のオバマ演説は多様な価値観が渦巻くアメリカ合衆国の今を射抜いた表現を散りばめていた。

圧巻はスピーチの冒頭部分で、まずは実際の勝利宣言映像をご覧あれ。

Obama Acceptance Speech HQ (Part 1) 11/04 - Barack Obama Victory Speech November 4th 2008


そして、お次はテキストで、

Hello, Chicago.

If there is anyone out there who still doubts that America is a place where all things are possible, who still wonders if the dream of our founders is alive in our time, who still questions the power of our democracy, tonight is your answer.

It's the answer told by lines that stretched around schools and churches in numbers this nation has never seen, by people who waited three hours and four hours, many for the first time in their lives, because they believed that this time must be different, that their voices could be that difference.

It's the answer spoken by young and old, rich and poor, Democrat and Republican, black, white, Hispanic, Asian, Native American, gay, straight, disabled and not disabled. Americans who sent a message to the world that we have never been just a collection of individuals or a collection of red states and blue states.

特に、私は"It's the answer spoken..."で始まるパラグラフが秀逸。オバマ次期大統領が、これまで置き去りにされてきたマイノリティに光を当て、世界に対して可視化した所なんて抜群のプレゼン・センスである。
こんなに素晴らしい演説なのに、私がチェックした日本の大手メディアの翻訳には温度差があって、ちょっと白けてしまった。もっと、表現的センス=どこが今回のスピーチのエッセンス部分なのかを理解しないと駄目。
一番私なりにしっくりした翻訳は、これかな。

最後に英語を習得したい人達へ一言。今回のようなスピーチは、表現も明確だし、誰に対して何を伝えたいのかが分かり易いので、ぜひ映像とテキストを教材として英語表現の豊潤な部分を学んで欲しい。こういうホットな題材から学んでいくことこそ、生きた英語を獲得するチャンスである。

勝利スピーチの残り映像もご覧あれ。

Obama Acceptance Speech HQ (Part 2) 11/04 - Barack Obama Victory Speech November 4th 2008


Obama Acceptance Speech HQ (Part 3) 11/04 - Barack Obama Victory Speech November 4th 2008

Wednesday, November 12, 2008

欲望資本システム終焉の風景

レーガノミックス以降、アメリカは「小さな政府」を唱え、インフレと失業をいかに抑えるかに重点を置いた政策を取ってきた。しかし、その政策は思ってもいない方向へとグローバル市場を導いていくことになる。高金利、大量失業者、ドル高、企業M&Aの促進、個人投資家も参加しての株式ゲーム、などが跋扈してしまった。
政府の市場への介入を最小限にし、個人の自己責任を重視するアメリカ型経済を標榜して、各国は競って市場経済を導入した結果、0から1を産み出そうと言うような錬金術的金融工学が幅を利かせ、今回のような100年に1度の経済動乱へと追い込んでしまった。

ここには、日本も含めた世界各国の経済官僚、株主、政治家、企業リーダー全ての責任が問われているんじゃないだろうか。
20世紀初頭、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンによって指摘されたことだが、質の問題と量の問題との混同は、世界を、また組織をマネジメントするリーダー達にとって最も恥ずべき錯誤の1つなんじゃないかな。ところが、その錯誤は、ほとんど思考の宿命であるかのように、21世紀に持ち越されてしまった。今回の欲望金融システムのように、あらゆるものを量の問題として考えておいた方がより「現実的」だという理由で、質の問題が人々の思考の地平から遠ざけられてしまうことは実に危険だ。今まで継続してきたアメリカ型金融システムでは、質の問題があっさり量の問題に置き換えられてしまう。アメリカも含めた世界の指導者たちは、この「現実的」であることの陥りがちな罠が、社会からその知的な活力を奪っていることを早く理解しなければならない。

この「現実的」であることが珍重される現象は最も多く見られる。そこでは原理は軽視され、多くの賛同者を得ることで形成されるコンセンサス(=数の論理)としての相対的な価値ばかりが重視されます。相対的な価値というものは、グローバル・マーケットがそうであるように、いつでも変化する。「現実的」であるには、社会的な通念にさからわぬことが求められるからです。現代のリーダーたちがそうであるように、その相対的な価値の変動にひたすら敏感であることは、真の意味で「現実的」なのだろうか?質の問題は、至る所で量の問題に置き換えられるしかないのだろうか?今回の金融システムの機能不全を違った視点から見つめてみると、21世紀の人類が直面しているこうした課題に置き換えることができるんじゃないかと考えてしまった次第。日本社・政治・経済は、この根源的な課題解決に有効な手段を果たして持っているのか、という不安が私にはある。

さて、ここまで今回の世界同時金融システム自壊について考えてみた。
最後に、この世界的現象が湧き上がってきた中で、Net上に映し出された現実を写真でご紹介しておこう。

まずは、10月10日ロイターが伝えた、金融危機の影響で国家的経済破綻が表面化したアイスランド。ネット競売ebayでは同日、そのアイスランドが売りに出された。

お次は、ジンバブエで起こっている世界恐慌後のような極度のインフレデノミ

この札束が、な・な・なんと100$の価値しかないなんて。。。

こういう感じで商品購入

1,000億$紙幣まで登場!!

でもその紙幣で、卵3個分の価値しかない。。。

Friday, November 07, 2008

MTV:新たな地平

80sは私にとって、Music Videoを一番どっぷり見ていた時代である。
それを牽引していたのがMTV!!


そのMTVが、以前は著作権などの関係でアメリカ国内でしか視聴できなかった数多くのMusic Videoを全世界で視聴可能にした。YouTubeなどと同様に、個人のWebやblogに動画を貼付けることもOK。
そのサービスとは、MTV MUSIC - I Want My MTV

私が当時、一番気に入っていたのは、これかな。映像的センスといい、音楽的インパクトといい、Marvelous!!

Wednesday, November 05, 2008

Histrical Change: USA to World

我々はアメリカでの歴史的瞬間=黒人初の大統領誕生を目の当たりにしようとしている。


ハワイ・ホノルルで生まれ育った、アフリカ系アメリカ人であるBarack Hussein Obama, Jrがアメリカ最高権力の座に上ろうとしている。それはアフリカ系アメリカ人のルーツと歴史を考えれば、まさに画期的である事象であろう。そして、アメリカに住むマイノリティにとっても大変モチベーションの上がることかもしれない。アメリカの各メディアが伝える開票速報も、いつもの大統領選より活気を呈している観は否めない。
それほど、マイノリティ出身の大統領が誕生する事実は、アメリカで学び、暮らした私がここ日本にいても、多民族国家であるアメリカにとっての衝撃度が体感できる。

キング牧師の余りにも有名な45年前の演説"I Have a Dream”が進化する瞬間が到来しようとしている。

現在CNNが伝える開票速報では、オバマ氏が207選挙人を獲得し、過半数まで後63に迫っている。


“Economy Most Important Issue”当然やろね。