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Tuesday, December 02, 2008

Web雑感

最近目に付いたWeb Communicationを幾つか紹介してみよう。

まずは、皆さんよくご存知の「MUJI」のグローバル・サイトである。


このサイトの特にメッセージ部分は、無印良品の世界市場に向けた意志を実に明快な言葉で伝えている。
「これでいい」という何の飾りもない言葉から見えてくる無印良品の意志が印象深く残る。「これがいい」という私欲から離れ、「これでいい」という抑制や譲歩を含んだ理性で商品を選択して欲しい願いが込められている。このキー・メッセージが、多様な言語によって世界に届けられる。無印良品の存在意義というものは数々の商品やサービスで明確化されているが、言葉化することでその浸透力は数段アップするであろう。

お次は、京都で450年の歴史を誇る、京友禅の名店「千總」のサイトである。ここはもちろん京友禅として有名な店ではあるが、世界中のトップ・ファッション・デザイナー達が千總ならではのファブリックを探しに来ることでも知られた存在。アパレル業界で確固たる地位と伝統、革新性と歴史性を持ち合わせた老舗が世界へ向けて発信するのはまさに日本の「美」。



このblogでも紹介した、伊藤若冲の「動植綵絵」を使ってみたり、江戸時代の美意識が反映された絵画が各所で表現されている。サイトの動きもなかなか面白い。こういった伝統や美を伝える表現もあるんだと感心させられたが、京都にあるWEB制作会社にこの手法を取れるとこってあるんだろうか。それが疑問だ。
この千總にまつわるこぼれ話を1つ。以前、私は知り合いのファッション・クリエーターの方に連れられて、千總の姉妹店である「總屋」で色々お話を聞かせて貰ったことがある。總屋のプロデューサーの方と1時間ほど対話した中で、その方が日本のセレクトショップで異彩を放つ「VIA BUS STOP」の基礎を創造される中で洋服文化に疑問を抱かれた話、そこから和の世界への転回など、実に興味深い話を拝聴したことを思い出した。そのような発想豊かな人材を抱える千總の組織力・洞察力が、このサイトからは滲み出している。

まだ私のアンテナに引っかかったサイトはあるのだが、それらは次回以降のお楽しみということで。

Wednesday, November 19, 2008

日本的「美」を考えてみる

先日書店でいつものように書籍を物色していると、1つの面白い書籍に出会った。
それは、平凡社から出ている「日本の美100」。
梅原猛、磯崎新、横尾忠則達選者25人が、1人4つずつ日本の美について挙げて考察する趣向である。


この書のカバーには、これでもかと言うぐらいの満開の桜の写真で飾られている。これも、もちろん「日本の美」の1つではあろう。

「日本の美」という大文字の「美」をこの本は示そうと試みてはいるが、やはりそこに掲載されている「美」は多様なモノ、事象、思想の断片を寄せ集めたに過ぎないことは仕方がないことなのかもしれない。「日本の美」と限定はしてみても、個々人が思い浮かべる「美」は人それぞれ違うモノになるのは当然である。

では、私自信にとっての「日本の美」とはなんだろうかと、考えてみた。
昨年、伊藤若冲の代表作「動植綵絵」が、「釈迦三尊像」と共に展示されるという秀逸な展覧会へ足を運んだ。会場となったのは、京都・相国寺。120年ぶりの代表作同士の遭遇に立ち会うことができ、漠然とではあるが、「ああっ、これは本当に美しい」と体感した。特に、若冲の描いた「動植綵絵」は、何とも表現できないタッチ、書き込み、繊細さ、線の躍動感に満ちていた。私の主観ではあるが、今まで鑑賞してきたどの絵画よりも私は魅了されたのだ。




しかし、これが私にとっての「日本の美か?」と問われると、ちょっと待てよと思ってしまう。青山二郎がその著作「眼の哲学 利休伝ノート」の中で述べた千利休の飽くなき美を追究する思想にも共感してしまう。北大路魯山人が追求した書、陶芸、美食を統合した姿勢も「日本の美」の1つではないのか。


こう考えてくると、やはり私はあのフレーズを想い出してしまう。
そのフレーズとは、批評という体系を日本で確立させた小林秀雄の「当麻」(「モオツァルト・無常という事」所収)という短いテキストの中にある。能の体系者・世阿弥が美というものをどういう風に考えたかを表現したフレーズ、「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」。


小林はこのフレーズで「美」というものは、人それぞれが思い描く美しい建築物、自然、絵画、などがそこにあるだけだと。だから、「日本の美」のように大上段に構えて、一言で表現したり、選択することはできないのだと。

皆さんにとって、「日本の美」と何ですか?