Friday, November 23, 2007

”Visionary"2007前半:ネームペンから見えてきたWithout Thought思考

今年前半に、私は神戸のステーショナリーショップで、凄く手になじみ易いネームペンを購入した。ちなみにネームペンとは、ボールペンに印鑑が付加された例のものである。このペンは、ユーザビリティに富んでいるだけではなく、デザイン性も他を圧倒するものがあった。まずは現物をご覧あれ。



もっとクリアな画像をお望みの方には、

























このシヤチハタ製のネームペンを購入してから分かったことなのだが、なんと私が以前このブログの「Creative考」の中でもふれた深澤直人氏デザインのペンだったのだ。何たる偶然。これも、私のSerendipityであろうか。

以前から、私は深澤直人氏の仕事に大変興味を持って眺めている。しかし、今回氏の仕事を良く知っている人から見ると、なぜネームペンなの?と思われる方もいらっしゃるかもしれません。私もその1人で、なぜ日本を代表するプロダクトデザイナーがネームペンのデザインなのか?この疑問に対する答えが、氏の著書である「デザインの輪郭」で明らかにされている。



それは、彼のデザインする際の基本姿勢である"Without Thought"から来ているように思える。"Without Thought"を直訳すると「思考せずに」になるのだろうが、人は無意識にモノ(物事)と関わってるということを、このフレーズで伝えたいのであろう。氏の著書の中では、行為に溶けるデザイン(デザインは存在し、目的も達しているが、モノ自体は消える)とも表現される。傘立てが無い所に傘を立てる、傘の柄にモノを掛ける、などの人間が「無意識に」、「無自覚に」、あるいは「考えずに」という概念に光を当てる。深澤氏のデザインを体現しているこの思考こそが、今回私が手にした、誰もが日常普通に使用しているペンに印鑑を付加した「ネームペン」のデザインへ向かわせたのではないだろうか。

この"Without Thought" = 「行為に溶けるデザイン」というデザイン思考は、ジェームス・ギブソンの創造した用語、"Affordance"にも言い換えられる。日常で人々が普通に行う行為(アフォーダンス)を、深澤氏がデザインした「リモワ・スーツケース椅子」にも見て取れる。この場合の行為とは、飛行場などでスーツケースに座ったりする行為である。実にユーモア溢れる、ユニークなデザインに帰結している。





















一般的にハイスペック信仰みたいなものが、結構行き詰まりを見せている。私が見ていて感じるのは、人間側のハードディスク容量がもういっぱいいっぱいになってるように見える。例えば、Digital Gadgetや家電製品などを例に取っても、その多機能性を補完するために分厚い説明書を付加してくるが、私なんかは殆ど読まずに感覚的に触って憶えている。これからは、もっと直感的な操作性や、感覚的にその良さが分かるものが重要になってくるんじゃないだろうか。その意味でも今回取り上げた深澤氏の"Without Thought"思考によるネームペンのように、限界までデザイン性を削ぎ落とし、直感に訴えることこそが、時代を先取りしているように感じる。

4 comments:

YO-YO TAYLER said...

日常の中の究極って、ありますよね。
でも、あくまで「日常」だから、その逸脱性(?)は度外視して、結果的には「使いやすいもの・使い勝手が良いもの」を手に取り、そこに、「モノ」としての存在性を認める‥みたいな?

そんなモノ達の中に、実は類稀なるエピソードや斬新な機能、画期的なデザインが共存していて、そういうハードルを越えたモノが生き残るのだと思います。
非日常を日常にする‥YO-YOもそぅいぅモノ好きです☆

YF Velocity said...

YO-YOさん、早速のコメントThanksです。
YO-YOさんの表現:「非日常を日常にする」デザイン、なんか良いですねぇ。私もそういうクリエイティブに惹かれます。
人間が日常的に、無自覚に行っている行為をデザインすることほど、困難なことはないのではないかと考えます。でも、それを表象化させたデザインを目の当たりにしたとき、ヒトはそのプロダクトを、それこそ無意識に手に取っているってことなんでしょうね。

だい said...

このプロダクトを開発するに至ってのドキュメントを見た事があります。深沢氏の考え方は感覚と理論、両方からアプローチをかけますよね?それが凄く刺激的でした。

原研哉氏が言ってた事なんですが、「デザインは日常生活の中から生み出されるモノで、その日常の「悲鳴」に耳を傾けなければならない。」
このプロダクトはまさにそこから生み出されたモノだと感じます。

YF Velocity said...

だいさん、コメントどうもです。
そんなドキュメンタリーやってたんですね。見たかった~

深澤氏のデザインアプローチは、論理的であり、感覚的であることは確かですね。彼ほど、私の領域でもある左脳的思考を兼ね備えたクリエイターは少ないんじゃないかな。

原氏の言葉「日常の『悲鳴』に耳を傾ける」こそ、アフォーダンスであり、Without Thoughtそのものですね。