Thursday, September 10, 2009

複眼的眼差しに必要なスキルって何?

私は常日頃、多様な事象を、複眼的な視線で見つめていきたいと思っている。
それは何もビジネスに限った事じゃなく、日常生活の中で暮らしていく際にも、その眼差しは必要だ。
じゃあ、そういう視線を養うために重要な要素って何だろうかと考えている時、1つの論考に出会った。
その論考とは、“Beyond Design, 10 Skills Designers Need to Succeed Now(Fast Company)”である。
これは、もちろんデザイナーに必要なスキルを10個記述してるのだが、これこそ私が考える物事に対する複眼的眼差しを養うのに必要な要素とリンクしている部分が多いと感じた。

このことを踏まえて、それら10個の要素を眺めてみよう。

1)Passionate Curiosity(情熱を持った好奇心):Continually explore and understand. More often this is a key differentiator between those who will make an impact and all the others. アート、ファッション、デザインなど何でもそうだろうが、自分が興味を持ったことに対してはとことん調べ、理解し、自身の知識栄養素にしていかなければ意味がない。特に、クリエイティブ領域に関わっている人々にとっては、他者に最終的なインパクトあるものを提供するために必須な要素ではないだろうか。

2)Imagination(想像力):Bring ideas and opportunities together in ways that were not initially obvious. It can be a powerful and defining capability for a designer. これは説明すまでもなく、どんなビジネス、どんな生き方の中であっても、想像力が無ければ何も創造できない。アイデアとタイミングを活かして他者とは違ったモノを見いだす。想像力を育成するためには、より多く自分とは違った見方ができる人々とコミュニケーションを取ることが大事。

3)Objectivity & Self Awareness(客観的であり、自覚的であること):Assess yourself and your work, and view yourself through the eyes of others with a realistic understanding of your capabilities. これは、視野狭窄に陥るなという戒め。自身の視線を鳥の目のように、高みから全体を客観的に見渡し、そのことを意識して実行できるかである。ビジネス現場でも、日常生活の中でも、木を見て森を見ず的な発想をする人が多いが、これにはホントうんざりさせられる。

4)Crisp Communication(明瞭なコミュニケーション):Build credibility. Often the language of design is very different from the language of business. The ability to effectively communicate across the disciplines is critical for a designer to influence an organization. これは、誰にも分かる言葉で話しなさいということである。例えば、ビジネス現場においては、自身の専門領域の言葉で、それ以外の人々に対話を投げかけ、混乱させてしまうシーンが多くみられる。政治や医療などの世界を見ていてもそんな感じを受ける。誰にでも伝わるコミュニケーションこそ、どんな領域にでも求められているんじゃないかな。

5)Effective Storytelling(効果的な物語作り):Fold and translate your ideas into the priorities of your client or organization. なぜ今こういう仕事が必要なのか、デザインが必要なのか、行動が必要なのかなどを、 きっちり語れるように日頃から心掛ける。自分が携わる仕事、他者との関係、趣味との付き合い方など、自身が関係する全ての事象に対して、他者を説得できるようになることは重要。例えば、ファッション、建築、デザインなどクリエイティブ領域に携わる人々は、自身が創造するモノについての物語を語れなければ、相手には伝わらないでしょう。

6)Flawless Execution(無駄なく動け):Get things done. Long gone are the days in which a designer handed work off to a project team to figure out. (It was never a good modus operandi, anyway.) Today, a designer has to work with cross-functional teams to advance designs and shepherd them through to production--every step of the way. 困難な問題に出合った時には、自分の中に貯め込んで考えず、第3者を巻き込んで知恵を借りる。自分一人では何も動かないことを自覚せよ。物事を後回しにせず、動きながら考える。

7)Business Acumen(ビジネス的洞察力):Create value in your markets. Effective designers need to understand how their businesses (or their clients) what role design can play to bring an advantage to their customers. 今の時代、トレンド把握にせよ、市場動向の見極めにせよ、目利き力というものが大変重要であると思っている。日常や趣味の中でも、良いモノに出会うためには、この目利き力が大事。もちろん、目利き or 洞察の動体視力を養うためには、数多くの失敗をしなければ、力は付かない。失敗を恐れず、まずは行動し、自身の眼で物事を精査し、他者にとっても美しい、素晴らしいモノや出来事に巡り合いたい。そのためには、多彩な人々との対話、多くの一流品に触れること、多様な良書を読むことなど、自分からどんどん外部へ動くことが大事。

8)Global Awareness(地球視線&世界的視野):There are really two aspects of to global awareness: understanding how changes around the world are affecting the customers and markets; and understanding that the talent pool for designers today is global. グローバル市場、環境問題など、世界的視野を持って、物事に対処すべき時代に我々は生きていることを自覚しなければならない。地球規模のマクロな眼差しを持つことは、3)でも述べた「木を見て森を見ず」的発想からの脱却への一歩かもしれない。

9)Context(文脈・意味・説明):Bring ideas and designs to the table that are relevant by considering current economic, social and business trends. 余白に書かれた内容を読み取る力もこれからは必要だろう。現在のように、高度に洗練された情報社会において、我々は多種多様な編集されていない情報に晒されている。このような状況では、7)で議論した目利き力と共に、色んな事象に対しての目に見えない部分=余白を読み取る読解力が必要になる。この力が欠如していると、今時代が要請している事象について盲目になってしまう。

10)Talent(才能):Talent is intentionally last on this list. Having a real talent for design is as critical as it has ever been. However, talented designers are far more common than those designers who have real talent complimented with the attributes that are outlined above. 現在のような不確実な時代の中で、成功している人を見ると外野は直ぐに、「あの人は才能があるから」とか、「あの人は持って生まれたモノが違う」とか、実に程度の低い議論をよく耳にする。私の持論として、天才などという代物はこの世には存在しない。才能が豊かな人は、自身の能力を常に磨き続けているのではないだろうか。生まれながらに、色彩能力に優れていたり、文章能力が秀でてたり、会話能力が高かったりする人も時には存在するかもしれないが、それらの能力も磨かなければ宝の持ち腐れであろう。目利き力然り、コミュニケーション能力然り、スキルというものは研磨してこそ意味がある。

ここまで、デザイナーに必要な10個のスキルという論考を基に、私独自の解釈で複眼的動体視力を身に付けるための10個の要素を表現してみた。これら10個の要素を眺めてみて、私もまだまだ足りない、いや全然見に付いていない部分が多々ある。21世紀に生きる者として、私は今後もこれらの要素を会得するための努力を惜しまないことの意思表明として、今回ブログ化した次第である。

最後に、私がいつも興味深く見つめているGlobal Creative Company:Weiden+Kennedyのポートランドのオフィスに掲げられているフレーズで締めよう。

David Kennedy


Weiden+Kennedyのオフィスの壁には大きく“Fail Hard”と書かれている。つまり、「大失敗を恐れるな」ってことが、スタッフの目にすぐ留まるように大きく掲げられてるんですね。今回のblogのテーマでもある、複眼的眼差しを鍛えるにも「大失敗を恐れるな」という姿勢が常に必要になってくるんじゃないかな。

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