その作品とは、「Glen Gould ~Ryuichi Sakamoto Selection~」。
坂本龍一が自身のセレクトによる、天才・グールドの珠玉の演奏を集めている。
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私が初めてグールドのピアノに出会ったのは、高校生の頃。その時の衝撃は言葉ではなかなか表現できない。
彼が奏でる、ワグナーのマイスタージンガーをオーケストラではなくピアノのみで聞かせる演奏家がこの世に存在することに驚かされたのだ。
今回のアルバムを創造するにあたって坂本はこう述べる。「グールドが弾くバッハは、僕にとって、まるで作曲家自身が弾いているかのように、正確だ。また同時に、僕は彼の弾くブラームスをこよなく愛している。いったいどうやって、彼は若くしてあのような深い瞑想性と沈静なるメランコリーを獲得してしまったのだろうか」と。
坂本龍一は聴くが、グールドは聴かない。そういう方は、一度グールドが奏でる音に耳を傾けてみて欲しい。その静かではあるが、力強いグールドがピアノから創造する音は、バッハやブラームスを敬遠していた人をも虜にしてしまうだろう。
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