Thursday, January 29, 2009

プリンシプルと美意識の交錯

現在神戸・大丸で開催中の「白洲次郎白洲正子展」に足を運んだ。


何より私を驚かせたのは、白洲夫妻が暮らし、思索し、対談した場所:「武相荘」(ぶあいそう・武蔵と相模の境界にあることに因んでいるとか、白洲次郎の性分である無愛想から名付けたとも言われる)の一室を、インテリアなどもそのままに再現したセクションを中心に展示会が構成されていた所である。

展示会カタログ


そのリアルな生活空間の周りには、白洲次郎が関わった憲法改正草案要綱や、GHQとの遣り取りをしたレター類などの歴史的ドキュメント。スタイリッシュな白洲次郎が愛用したHERMESのクロコダイル製アタッシュケース、Louis Vuittonのトランク、イッセイ・ミヤケに特注した裏地がミンクのコート、ヘンリー・プールでオーダーしたスーツやジャケット類などが整然と展示されていた。ただ、日本で初めてジーンズを穿いたと言われる白洲次郎愛用のジーンズがなかったのは少し残念ではあるが。
また、リアルな美を愛した白洲正子が、自身の目利き力で収集した桃山時代(日本史上最も美術や文化が爛熟した時代)を中心とした陶磁器や書画。と思うと、北大路魯山人の焼き物があったり、鎌倉時代の仏像があったりと、実にユニークで、多彩な美の饗宴!!

吉田茂の懐刀として日本の戦後復興を助けた前期・白洲次郎、東北電力会長や様々な企業の取締役として高度経済成長の原動力となった中期・白洲次郎、そしてカントリー・ジェントルマンとして田舎から中央政財界に睨みを効かせた後期・白洲次郎。その全てがコンパクトに表現された展示会であった。
小林秀雄や青山二郎など一級の知識・文化人達から薫陶を受け、「形」を見る眼=目利き力を鍛錬された白洲正子の広範な美意識が垣間見られた展示会であった。

私はそれら展示物を鑑賞しながら、危機に瀕している現在の世界や日本の状況を、動乱の時代を疾走した白洲夫妻が生きていたらどのように評したのかを聞いてみたくなった。たぶん白洲次郎なら、この貪欲な高度資本主義をプリンシプルのないイズムであると言い放ったかもしれないが。。。。

白洲次郎関連展示物



白洲正子関連展示物

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