Tuesday, January 06, 2009

25年と250年

今日耳に飛び込んできたニュースには若干驚かされた。
あの世界的に知られるアイルランドのメーカー、ウォーターフォード・ウェッジウッド(Waterford Wedgwood)が経営破綻したというのだ。

この企業は創業250年の歴史を誇り、イギリス王家御用達で「クイーンズウェア(女王の陶器、Queen's Ware)」という異名を持つ高級陶磁器とクリスタルガラスを創造してきた。そのブランド力は相当強固なモノがあったはずだが、戦略的イノベーションを怠ってしまったのかもしれない。最近でも、ウェッジウッド社は低価格の硬質陶器を発売するなどの戦略を取り、陶磁器メーカーとして世界のトップシェアを争っていたが、21世紀に入って中国などアジアの陶器メーカーとの価格競争で相当疲弊していたようだ。

私は祖父や父親から受け継いだ、ウェッジウッドのネクタイピン、カフスリンク、クリスマス・プレートを所有している。特に、亡き父は現役時代よくウェッジウッドのネクタイピンやカフスリンクを愛用していた。
その想い出を巡らせると、今回の破綻には少し寂しさを覚える。

あの歴史あるブランドまでもが破綻する現状を分析する専門家達は、昨年から継続している世界的金融危機の延長線上にある欧州経済の単なる悪化を論じるかもしれない。しかし、私の考えとしてはそんな単純な話しではないように感じるのだ。もちろん、世界的景気後退は影響しているだろうが、それは単なる一局面で、ウェッジウッド社の経営戦略としての発想力欠如、イノベーション欠如が経営破綻に直接響いているように思うのだ。

今回の破綻劇とは現状対極に位置するであろう有名企業が、今年自社製品を市場に流通させ始めて25周年を迎える。
その企業とは、Apple社である。


Apple社も創業から経営危機に見舞われ続けた歴史を持つ企業である。しかし上記の25年間にAppleが創造したコンピューターが網羅された年表を眺めていると、この企業の飽くなきイノベーション力による、斬新性、デザイン性などを追求し続けている。今では、iPodという戦略商品によって、音楽コンテンツ市場を席巻し、そのビジネス発想のストレッチに成功している。

私自身も、アメリカ大学院時代には、爆弾マークに困惑しながらMacintosh PowerBookによって修士論文を書き上げ、日本に戻ってからも当時デザイン力を売りにしていたiMacを使用し、現在でもiPodで音楽を楽しんでいる。ウェッジウッドとは業界が違うので比較は難しいが、ウェッジウッドとアップルの差異は(私を含む)消費者を魅了する製品&サービスと、それらを創造するイノベーションの相違にあるのではないか。

25年と250年、現在の複雑怪奇な世界市場の中で生き残るためには単なる歴史の積み重ねだけでは駄目で、歴史を色褪せさせない発想とイノベーションをベースとしたブランド構築が一層求められていると言うこと。
私も今回はウェッジウッド破綻というタイムリーな話題の中で、ブランド構築を生業としていた1人として考えさせられることが多かった。

いずれにしても、ウェッジウッドの再建に名乗りを上げる企業が早く出てきて欲しい。

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