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Tuesday, March 03, 2009

Design Thinking視点の創造プロセス

今のビジネスの世界では、サービスやモノを創造し、それらの差別化と競争優位を生み出す源泉はイノベーションであることはここ数年語られてきた。
かのトーマス・エジソンは、白熱電球を発明し、このイノベーションを、芸術、技術、科学、事業手腕、更に顧客と市場に関する慧眼を融合させ、1つの産業へと収斂させていった。

このように、イノベーションを現在の世界不況化でも粛々と進展させている組織体がある。
IDEO、Apple、Pixerなどがその組織体の例として挙げられるだろう。
IDEOに関しては、このblogでもよく取り上げていて、そのデザイン思考を基点に置いた多様なイノベーション・プロジェクトには注目してきた。IDEOの独特なデザインソリューション手法:より良い顧客経験をデザインするための5つのステップ(Observation、Brainstorming、Rapid Prototyping、Refining、Implementation)についても以前考察しているので、今回は昨年12月号のHarvard Business Reviewの中で紹介されたIDEO社デザイン思考プロセス・マップを掲載することに止めておこう。

デザイン思考プロセス

今回は実際にデザイン思考を駆使して、商品やサービスを創造しているApple社の物づくりプロセスに関して述べてみたい。ちなみに、Apple社とPixer社の共同創業者がSteve Jobsであることから、そのプロセスには同じ思想が根底にあることを付け加えておきたい。



Business Week誌に“Apple's design process”という記事が掲載され、私はそこにiPhone、iPodなどのクリエイティブ力を持った戦略的商品を次々創造してきたApple社のイノベーションのコア部分を垣間見た。
その記事内容に関して、以下で簡単に纏めてみたい。

★ アップル・デザイン・プロセス

● Pixel Perfect Mockups(=精密なモックアップ作り)
時間を充分にかけて、曖昧さのない、正確な外見を実物そっくりに似せた模型を作る。後の過程で細かな修正をすることは膨大な無駄を生み出す。これは、IDEO社の“Rapid Prototyping”に相当すると思う。

● 10 to 3 to 1(=10から3に、3から1に)
10種類の全く異なる特徴を持つモックアップを作る。この際、10のうち7は残りの3つを際立たせるためのものである、というのは間違った考え方で、あくまで10種類のアイデアに基づいた精密で、文句の付けようのない模型を創造する。そしてこれを3つに絞る。さらに数ヶ月をかけて磨き上げた模型を作り、この中から1つを選択する。

● Paired Design Meetings(=2つのデザイン・ミーティング)
こうした模型創造作業の期間中、毎週2つのミーティングを継続する。1つはブレインストーミング。こちらではどこまでもとんでもない発言が許され、むしろ、どこまで滅茶苦茶で自由なアイデアが出せるかが重要となってくる。日本では、なかなかこの部分が成熟していなくて、単なる打合せに終始してします。もう1つはこうしたアイデアをリアルに落とし込むことできるか、デザイナーとエンジニアが一緒になって考えるミーティング。この2つのミーティングを繰り返すことで、強く間違いのない製品やサービスに結実していく。

● Pony Meeting(=ポニー・ミーティング)
方向性を出すためにはポニー・ミーティングというものが設定される。そこでは新しい機能やデザイン要素について、こういう風になっていて欲しい、とみんなで自分の欲しいものをDiscussする。印刷した結果の様子が見えるようにしたい、というような具体的な話のことだが、ここでは“I want a pony! Who doesn't? A pony is gorgeous!”(=ポニーが欲しい。ポニーがいたらゴージャスじゃないか)というくらい唐突なものでも無視せずに受け入れるようにするのだ。

このように見てくると、日本企業の中ではなかなか実行されていないプロセスが多く見つけ出せる。
やはり、デザイン、発想などのクリエイティブを必要とする物作りの中では、とことん突き詰めていくという姿勢、多様なアイデアの発生などを行える環境を形成していくという努力が必要なんじゃないかと、考えさせられる。
日本は物作りでは世界に冠たるパワーを、今でも顕在的・潜在的に持っていると、私は信じている。なのにそれが具体的な価値として、なかなか世界市場に現れてこないのは、今回のテーマであるデザイン思考を重視する環境作りが欠如しているからかもしれない。

Monday, February 02, 2009

Creativeな映画

インダストリアルデザインをテーマとした映画のトレイラーが公開されている。
オリジナルiPodやiMacをジョナサン・アイブ(Jonathan Ive)がデザインした時どんな化学変化が起きたのか?

Jonathan Ive inside Apple Lab

イケアのテーブルをデザインしたとき何が起こったのか?
クリエイティブの本質を思考するとき、その瞬間の出来事を映像を通して知ることができるのは、実に興味深い。



その映画とは、「具象化して形にする」(Objectified)というドキュメンタリーである。Muji、IKEA、Apple、Flip Video、BMWなど有名ブランドのデザイン思考の段階から、プロダクトが具体化していくプロセスを見せてくれる。日々目にするモノや実際に使われるモノをデザインし、それらに日常的に触れているそんな人達にとっては、目を開かれる思いがするに違いない。

この映像が、深澤直人に始まり、深澤直人に終わるという展開も見所かも。
どうも限定的な公開になりそうだが、是非機会があれば足を運んでみたい。

Tuesday, January 06, 2009

25年と250年

今日耳に飛び込んできたニュースには若干驚かされた。
あの世界的に知られるアイルランドのメーカー、ウォーターフォード・ウェッジウッド(Waterford Wedgwood)が経営破綻したというのだ。

この企業は創業250年の歴史を誇り、イギリス王家御用達で「クイーンズウェア(女王の陶器、Queen's Ware)」という異名を持つ高級陶磁器とクリスタルガラスを創造してきた。そのブランド力は相当強固なモノがあったはずだが、戦略的イノベーションを怠ってしまったのかもしれない。最近でも、ウェッジウッド社は低価格の硬質陶器を発売するなどの戦略を取り、陶磁器メーカーとして世界のトップシェアを争っていたが、21世紀に入って中国などアジアの陶器メーカーとの価格競争で相当疲弊していたようだ。

私は祖父や父親から受け継いだ、ウェッジウッドのネクタイピン、カフスリンク、クリスマス・プレートを所有している。特に、亡き父は現役時代よくウェッジウッドのネクタイピンやカフスリンクを愛用していた。
その想い出を巡らせると、今回の破綻には少し寂しさを覚える。

あの歴史あるブランドまでもが破綻する現状を分析する専門家達は、昨年から継続している世界的金融危機の延長線上にある欧州経済の単なる悪化を論じるかもしれない。しかし、私の考えとしてはそんな単純な話しではないように感じるのだ。もちろん、世界的景気後退は影響しているだろうが、それは単なる一局面で、ウェッジウッド社の経営戦略としての発想力欠如、イノベーション欠如が経営破綻に直接響いているように思うのだ。

今回の破綻劇とは現状対極に位置するであろう有名企業が、今年自社製品を市場に流通させ始めて25周年を迎える。
その企業とは、Apple社である。


Apple社も創業から経営危機に見舞われ続けた歴史を持つ企業である。しかし上記の25年間にAppleが創造したコンピューターが網羅された年表を眺めていると、この企業の飽くなきイノベーション力による、斬新性、デザイン性などを追求し続けている。今では、iPodという戦略商品によって、音楽コンテンツ市場を席巻し、そのビジネス発想のストレッチに成功している。

私自身も、アメリカ大学院時代には、爆弾マークに困惑しながらMacintosh PowerBookによって修士論文を書き上げ、日本に戻ってからも当時デザイン力を売りにしていたiMacを使用し、現在でもiPodで音楽を楽しんでいる。ウェッジウッドとは業界が違うので比較は難しいが、ウェッジウッドとアップルの差異は(私を含む)消費者を魅了する製品&サービスと、それらを創造するイノベーションの相違にあるのではないか。

25年と250年、現在の複雑怪奇な世界市場の中で生き残るためには単なる歴史の積み重ねだけでは駄目で、歴史を色褪せさせない発想とイノベーションをベースとしたブランド構築が一層求められていると言うこと。
私も今回はウェッジウッド破綻というタイムリーな話題の中で、ブランド構築を生業としていた1人として考えさせられることが多かった。

いずれにしても、ウェッジウッドの再建に名乗りを上げる企業が早く出てきて欲しい。

Monday, December 22, 2008

40歳を迎えたDigital Device

現在我々のデジタル・ライフから切り離せないモノが、今年12月で40歳を迎えた。
そのモノとは、PCを快適に操作するマウスである。
1968年12月9日に、スタンフォード・リサーチ・インスティチュートのエンジニア、ダグラス・エンゲルバート氏が作った世界で最初のマウスが公開された。


この写真が世界最初のマウスである。
Wiredの記事によると、
“Engelbart's first mouse was carved out of a block of wood and had just one button, just like Apple's. Underneath were two wheels connected to potentiometers: One recorded the mouse's movement along the x axis, the other one tracked the y axis.”
つまり、木片をくり抜き、ボタンがひとつ(上部の赤い部分)、下には縦軸と横軸の対応する二つのローラーがついていて移動量がわかる仕組みのようである。

この技術は殆ど今のマウスにも踏襲されていることを考えると、エンゲルバートの発想力、イノベーション力は凄いと改めて感心させられる。

このマウス誕生記念に連動するかのように、ロジテック社が自社製マウスの歴史を図式化したり、


とあるクリエーターが、Apple社のマウスの推移をマッピングしたりしている。


これらをトータルで見ると、マウスのデザインはどんどん丸みを帯び、人間工学に基づいた、形へと変化していっていることが理解できる。マウスのデザイン変化を見ていると、車であったり、家電製品などのデザイン変化とシンクロしているのが興味深い。

ちなみに、私が現在自宅で使用しているマウスは、


こんな感じです。
これは、デザイン集団:groovisionsコクヨがコラボして創造したモノ。
デザインがCuteで、私の手によく馴染むので、結構長く愛用している。

Friday, March 07, 2008

話すことの限定性

今回のブログでは、圧縮された時間から見えてくるエッセンス、限定された時間で話すということについて書いてみたい。

私が過去属していたビジネス・ソリューションといわれる分野では、多忙な人間=社長などのトップ・マネジメントに、限られた時間内で、自分達が伝えたいことをいかに伝えるかということの試行錯誤が様々な手法(エレベーター・トークなど)を創造した。しかし、それらの手法をいかに駆使しても、あのApple 社の暫定CEO・Steave Jobsのようなプレゼンテーションの達人の領域にどうしても到達できない。何故か。勿論持って生まれたものだから仕方が無いといってしまえば、議論はそこで終わってしまう。Jobsのプレゼンスタイルを見ていると、1つひとつの新しいプロダクトやサービスに関しては、実に簡潔に、そして短時間で自分の言いたいことを述べていることが分かる。「1つのプレゼンテーション=1つのプロダクトやサービス」が複合的にリンクされることで、彼自身の1時間以上におよぶトータルプレゼンは、聞き手に優しく(シンプルに)構成されていると考えるのが妥当だ。つまり、圧縮された時間をパズルのように組み合わせて、Jobsは巧みに聴衆を自分のペースへ引き込んでいくのである。それはビジネスプレゼンに限られたことではなく、彼のスピーチにもその「話すことの限定性」から醸成される力を感じる。特に有名な彼のスピーチ:2005年サマータイムのStanford Univ.での卒業式でのものなどは世界を駆け巡った。その中でも私が好きなな一説は、"Your Time is limited, so don’t waste it living someone else’s life."(by Steve Jobs)これを簡単に訳すと、「君たちの時間は限られている。その時間を、他の誰かの人生を生きることで無駄遣いしてはいけない」。彼のこのような切れ味の鋭い、ポジティブな言説は、聴く者を飽きさせず、その場に一瞬の清涼感さえ漂わせる。


では時間を圧縮すると、表現したいことの核心が見えてくるのか?これに答えてくれる「場」がアメリカにはある。アメリカのカリフォルニア州モントレーで年1回、学術、エンターテイメント、デザインなど多様な分野の人物が講演を行なう会を主催しているグループ、TEDのことを皆さんはご存知だろうか?ここのウェブサイトを見て貰えば分かるのだが、各界の著名人が10分程度のプレゼンテーションで、最新の研究や究極の本質論のエッセンスを濃密な時間の中で説明するスタイルをプレゼンテーターに要求していることが分かるだろう。英語初心者で無い私でも、大変早口な英語のため、細部まで理解するのはなかなか骨が折れる。しかしスピーカーが極限の時間で説明しようと試みることから、何が大切か=スピーカーのエッセンスがストレートに聴衆の耳に入ってくる。10分という時間でどこまで説明できるか、この火事場の馬鹿力のようなトークの迫力に、私のこのブログのメインテーマ"Think-Write"の対の言葉である"Think-Talk"に相通じるコミュニケーションの持つ凄みを感じ取った。凄みと表現したが、話すことの影響力と言い換えても良いかもしれない。

私は仕事上過去から現在に至るまで、プレゼンテーション、シンポジウムや様々なビジネス・ミーティングの場に話し手としても、聞き手としても、参加することが多くある。自分の話しっぷりも含めての反省なのだが、議論などに熱中すると話が長くなる傾向にある。これでは、受け手のモチベーションもどんどん下がるし、折角意義ある議論をしていても、結局打ち合わせが終わると頭に残っていないという事態に陥る。もちろん、全てのプレゼンや、会議での話を10分で纏めるべきといっているわけではない。限定された時間の中にこそ、話し手の伝えるべき核心が網羅され、受け手に伝わり易くなるのではないかという意味。

今までの議論を踏まえて、今回紹介するNYのMoMA(現代美術館)のキュレーター・Paola AntonelliのTED Talksを聞いてみると、その核心部分が少しだけ明確になってくる。彼女はキュレーターという職業柄、現代アートという他者に伝えることが困難に思われる作品でも、短時間で簡潔に伝える術を心得ている。今回ご紹介する彼女のTED Talksでも現代アートの様々な作品を、小気味良く聴衆に伝えている。彼女のプレゼンに耳を傾けると、以前何かの本に書いてあった現代アートにおけるデザインというのは機能性(Functionality)と言霊(Message)の融合であるというセンテンスが想い起こされる。いかに難解な作品であっても、Creative(=創造的で)でRemarkable(=他者に話したくなる、話す価値がある)な作品エッセンスを言葉化することで、コンパクトで誰にでも分かり易い表現が創造される。この彼女のスタイルにこそ、様々な職種の人々が自分「ならでは」の表現を作り出す = Creativityを磨くためのヒントが多く隠されているように感じるのだ。皆さんも彼女の言葉に耳を傾けてみてはどうだろう。