Monday, December 15, 2008

2008 Word & 2009 Plan

私が3日前のblogで、今年の漢字は「崩」じゃないかと予想したが、これは見事に外れて、「変」であった。
政治・経済・経営・社会など、社会科学的視線では妙にリアリスティックな考え方をする私としては「崩」の方が妥当だと感じるのだが。皆さんならどんな漢字を思い描きますか?


いずれにしても、ここ数年「命」(自殺者が増加)や「偽」(食品偽装増加)などの漢字が選ばれていたことを考えれば、今年は少し私の感覚としては明日への希望を込めた「変」なのかと捉えた。2008年で一番インパクトのあったフレーズが、バラク・オバマ次期アメリカ大統領の"Change"。そして、彼が次期大統領に選ばれる前から明確になった世界的金融大変動。その辺りから見えてくる言葉は、「変」だけだったのかもしれない。2009年はもう少し、PositiveでAggressiveな漢字が選択されることを期待。

さて、来年の予定をここで少し。

来年の初旬には、私の観たい展覧会が結構関西で目白押し。自身の備忘録として、ここに記しておこう。


まずは、1月下旬から神戸で開催される「白洲次郎白洲正子展」(大丸ミュージアムKOBE於)。第二次世界大戦前後を軽やかに疾走し、戦後は「美」と「義」に生きたこの華やかな夫婦のスタイルを、大変動の今こそその息吹に触れてみたい。

お次は、関西出身の世界的建築家・安藤忠雄の建築展が来年2月に開催(TOTOテクニカルセンター大阪於)。安藤忠雄の30代の代表作「住吉の長屋」&「光の教会」の縮尺1/10サイズのコンクリート模型を展示するほか、現在進行中の「プンタ・デラ・ドガーナ再生計画」&「モンテレイ大学 RGSセンター」などの海外最新作までを網羅するようだ。安藤忠雄という建築アイコンのクリエイティブ思考に触れる絶好のチャンス。

次の2つはまだ開催日程が未定なんだけど、ぜひ足を運びたい展覧会。
1つは、「20世紀のはじまり ピカソクレーの生きた時代」(兵庫県立美術館於)。もう1つは、私がその作品力に常々リスペクトしている杉本博司「歴史の歴史」展(大阪国立国際美術館於)。


この杉本博司の作品に初めてNYで触れてからのファンなのだが、彼の作品の深みは言うまでもなく、彼の記述するテクストにも私は大変共感を覚える。

さぁ!!2009年も面白いコトやモノを見尽くそう。

Sunday, December 14, 2008

100歳の思索とサンタクロース

「世界は人間なしに始まったし、人間なしに終わるだろう」とその著書・「悲しき熱帯」でのクロード・レヴィ=ストロースの言葉である。
レヴィ=ストロースは、今年11月で100歳を迎えたが、まだまだ旺盛な思索は衰えを見せていないようだ。


本日私は久しぶりに彼の著書を読み返した。この時期にマッチした、「サンタクロースの秘密」。
彼は自身の文化人類学的フィールドワークによって著してきた数々の著書の中で、一貫して混沌とする西洋中心主義、オリエンタリズムへの痛烈な批判を繰り広げてきた。
この「サンタクロースの秘密」でも、クリスマスの宗教的儀礼が、アメリカの第二次大戦後における影響と威光による商業主義的な催しへと変化させられたことにシニカルな視線を投げかけている。

構造主義という20世紀を代表する思想体系の創始者たる"Living Legend"(=生ける伝説)として、レヴィ=ストロースは存在そのものが「神話」になりつつある。そんな彼が、現在の混迷極めるグローバル市場に対して、その碩学の世界視線にはどう映し出されているのか。そんなことを考えてしまった今日1日であった。

Saturday, December 13, 2008

“ ”が切り取るクリエイティブ

“ ”(クォテーションマーク)は、文献から引用したり、会話文を入れたりするのに使われる。
このQuotationそのものをタイトルとしたクリエイティブ系ジャーナル誌が登場。


他者と会話してたり、文章を読んでいると、その瞬間の言葉や、文章や、気持ちを切り取って、Quotationマークに取り込んでいくって感覚が小気味よい。
扱ってるカテゴリーは、クリエイティブに関するアート、フォト、アニメ、ファッション、映画などのキーワードをトータルに評論され、編集された雑誌って少ない感じがする。
読み手側に、クリエイティブ視点で多様な事象を明快に分析し、テキスト化して伝えていくのは困難な作業だろうけど、やはり言葉やテキストでクリエイティブを語っていくのも大事だから。
多くの雑誌が休刊に追い込まれているけど、来年もこんなスタイルのメディアが少しでも誕生することを望んでいる。
この雑誌、初版は完売とか。

Friday, December 12, 2008

極私的キーパソン

この季節、書店を巡ると、各種雑誌が今年の10大ニュース、来年のトレンド分析などの2008年回顧特集が目に付く。
どれも私の心に訴えかけるモノがないのが常なのだが、今回は少し面白そうなのがあったので購入。

1年前に休刊したダカーポがリノベーションして発刊した雑誌、「ダカーポ editus」の2008→2009という特集号だ。editusとはラテン語の「編集」の意味らしい。
この雑誌に私が引き寄せられたのは、全てをランキング形式にし、2008年の多様なジャンルを私が今年その発言に興味を持ったクリエイター達が分析している所。今年の人・モノ・ブーム・事件を、凄く的確に「編集」しているのに好感を持てた。


この特集を見て、私自身の2008年回顧として、パッと頭に浮かぶものを記号化してみると、

世界恐慌のリアリティ/アメリカの凋落/YouTube/バラク・オバマ時代へ/マイノリティの攻勢/リーマン・ショック/日本政治の脆弱性/秋葉原通り魔/1995年からの警鐘/iPhone/レーザー・レーサー/ブルーレイ方式/Google携帯「アンドロイド」/Chrome/H&M上陸/Yves Saint-Laurentの死/川久保玲(Comme des Garçons)の快進撃/阪急百貨店メンズ館/ファストファッション/アイスランド危機/日経平均7,000円割れ/投資銀行形態消滅/宮崎駿の子供向け回帰(ポニョ)/ダミアン・ハーストのアート力/Art Bubble/シンボリズム建築/モバイルアート/NIKEなどスポーツブランド隆盛/反動・回帰のコミュニケーション(篤姫、25年後の磯野家など)/UNIQLOCK/iPS細胞/Nobel Prizeと4人の日本人/ネットライフ生命保険/阪神タイガースの憂鬱/Creative Classの可視化/

こんな感じになります。

こういう風に表象的に今年を眺めてみると、何となくアーキテクチャの崩壊が各所で進行しているイメージでしょうか。今このブログを書いてる時点で、まだ今年の一字は発表されていないので、私の予想としては「崩」にしておきましょう。

話が逸れましたが、ダカーポeditusの2008年振り返り特集では、私が注目するクリエイター達が分析していることに好感を持ったと最初に言いました。1年を回顧する特集では、だいたい御大的評論家が在り来たりの分析しかせず、実に退屈なものが多く散見されていました。Creativeな視点を入れるだけで、これだけ面白いものに化学変化するのかと実感した次第です。

では、その極私的キーパソンとは誰か。中村拓志、藤原ヒロシ、片山正通などのCreative思考を実践している人々。彼らの視線は、マクロからミクロ、ハイからサブ、という感じで、小さな物でも面白いことは見落とさないという精神に共感を覚えます。特に、新進気鋭の建築家・中村拓志の著作「恋する建築」は、私の中では今年の1冊として挙げれるくらいの読了感があったことを今でも想い出します。


今年は私にとっても多様な転換点があった年でしたが、首尾一貫Creativeな視点で物事を捉えようと心掛けていたことには違いありません。私が思い描く未来と、極私的キーパーソンが描く未来がどこかでリンケージすることを願いつつ。

Thursday, December 11, 2008

見えざる大陸の勢力分布

ネット上の情報ソースには時として、「オォッ」と驚かされるものがある。
今回ご紹介するマッピングも、その1つ。

Internetが誕生して以来、我々はリアルとバーチャルと言う2つの世界を持つようになってしまった。
技術革新による飛躍的な進歩により、バーチャル上でリアル世界と同じように、モノやサービスの売買、他者とのコミュニケーション、多様な形態での情報発信などが可能となった。
この仮想現実世界は見えざる大陸として、現在無限に拡大するネット文化圏を構築しつつある。

今回ネット上で見つけた文化圏マッピングは、主に日本的文化圏としてのネット勢力分布図と理解できる。
そのマッピングは、数多くの他者の意見を取り入れつつ構築(まさに、オープンソース)されているため、今もなお修正され、再構築され続けている。


このマッピングを見ていただいて、何か気づいたことはありませんか?
mixiと2chの間に、我々が記述しているblog文化圏が存在していることに着目するのではなく、私が面白いと感じたのは、そのマッピングのための縦軸と横軸の考え方。
私のように、長年企業戦略やブランド戦略の場でワークしてきた者からすると、縦軸「庶民派 vs. マニアック」&横軸「仲良し vs. 殺伐」などという発想は頭になかなか浮かんでこない。実に興味深い、軸の取り方である。

このマッピングを見ていると、改めてネットの広がりを体感できますね。私自身も知らないサービスがありましたし。今後もストレッチしていくと予想されるネット文化圏でしょうが、我々は消費者として、発信者として、作り手として、複眼的思考でこの見えざる大陸を捉えていく必要があるでしょう。

Wednesday, December 10, 2008

Sannomiya to Motomachi: 光と色の饗宴

神戸は未だかつてないほどの光と色で埋め尽くされている。
その光と色の饗宴は、世界の金融狂乱によるシステム崩壊をも、未知の彼方へ放り投げてくれそうな幻想さえ抱かせる。

まずはJR三ノ宮駅周辺

そして、元町へと移動し、神戸大丸の中を覗くと、赤い誘惑が我々を出迎える。

神戸大丸から再度三ノ宮方面を目指すと、そこにはルミナリエの鎮魂と希望の光の回廊が我々を飲み込んでいく。


ブティックの壁面に映し出されたルミナリエの光もまた幻想的






Tuesday, December 09, 2008

Journalist向けGrammer Test

BBCが自社の記者などに対してGrammer(英文法)のテストを試みた。
なぜ言葉のプロフェッショナルであるジャーナリストに、それもネイティブスピーカーに対してGrammerのテストをするのか?そういう疑問を持つ人もいるかもしれない。
BBCのネイティブの記者が書いた記事に関する苦情のうち、Grammerに関するものがよくあるらしい。そこで、今回のテストという運びとなったようだ。PresenterとCorrespondentの会話に計20個の文法の誤りを見つけ出せというもの。ちなみに、BBC Journalist達のの正解率は60%から95%とばらつきが見られたようだ。私もトライしたが、結構難解な部分もある。
いかに今回の課題を掲載しておきますので、興味のある方は是非チャレンジしてみてください。
さて、あなたは何個間違いを見つけ出せるかな?

<テスト問題>
Presenter: The Transport Secretary, Ruth Kelly, said she is leaving her job - the second ministerial resignation in just over a week. Ms Kelly says it's a hard decision but her family are growing up and she wants to spend more time with her children. We'll be joined by her momentarily but first, our political correspondent, Nick Robinson, is here. Nick, is there more to this than meets the eye?

Correspondent: Ruth Kelly asked to leave the cabinet several months ago - so in a way, there's no surprises here. But what is odd is the way the news has been broken: in the early morning, before her conference speech. Between you and I, it looks like No 10 were trying to mitigate against a dramatic departure - in affect, putting out a spoiler.

Presenter: It had been rumoured that Ruth Kelly might be the leader of a mass resignation or at least, partner with one other minister - is that no longer a possibility?

Correspondent: You're right - one minister in particular, inferred to me that he would be off but has since changed his mind. While he'd be loath to admit it, the current financial crisis has effectively done the PM a favour. None of his other ministers are planning to try and move against his or her leader at such a crucial time and so no, I don't think he'll have to face up to a revolt. Meanwhile, he has one less opponent in the cabinet, so Mr Brown's position may even be stronger as a result of this, particularly if his speech receives fulsome praise.

Presenter: Is the subject of the leadership likely to receive less attention, then?

Correspondent: Well, I wouldn't go that far. Ministers sung from the same hymn sheet in public but behind the scenes at conference, it was a different story. There certainly are people who say Mr Brown's not the right man to lead Labour into the next general election - an assertion that No 10 refutes, of course. The public might be bored of speculation but the question of Gordon Brown's leadership is not likely to go away, given the enormity of the subject, no matter how many people are disinterested in it.

Monday, December 08, 2008

黒の誘惑

このBlogでも取り上げたことのある、COMME des GARÇONSがまた新たな挑戦を使用としている。
今年は、LOUIS VUITTONやH&Mと組んで、新たなクリエイションの地平を切り開いた。
そして来年1月からは、"Black COMME des GARÇONS"という新たな期間限定ショップを構築し、消費者と市場に今までとは違うShop形態とクリエイティブを伝えていく。


COMME des GARÇONSの創造者・川久保玲はかつて、「未来へのかたち。未来と根源の調和。相反するものから生まれる力、創造。完成されていない荒削りなもののみが放つ強さ」ということを市場に訴えかけた。
今回の試みも、「黒」というカラーへの拘りと、その魅力をいかに伝えていくかに成功の鍵はあるだろう。しかし、必ずや「少年のような」気持ちを持ったクリエイター達は、未完の荒削りの思考で、世界的景気衰退の市場に風穴を開けてくれることであろう。

Sunday, December 07, 2008

この季節に必要なモノもCreativeに

Greeting Seasonの必需品、パッキング用の荷造りテープ!!
皆さんはパッキングテープにはどんなものを使っていますか?
ガムテープ?それでは、楽しみがないですよねぇ。
プレゼントを贈る側は、受け取り側のことを考えて荷造り用テープにも遊び心で楽しんでもらおうって考えたりしません?
私が使ってるのは、groovisionsのデザインしたパッキング・テープ。


オレンジ・カラーに、groovisionsオリジナルなキャラクターが描かれていて、こういうので包まれて来た荷物は面白いと思って、ここ数年使っている。

これ以外でも、ReubenMillerのサイトでは、ユニークで、クリエイティブな荷造りテープが多く紹介されてるんで、皆さんも今年のパッキングは工夫を凝らしてみてはいかが。

Saturday, December 06, 2008

No-Title

本日のBlogは、このBlog始まって以来の短さ。
本日購入した、美しいZIPPOを写真でご紹介。
ZIPPOと藤原ヒロシ率いるfragment designが創造したWhite ColorのZIPPO。
最近、私は「白」という色に改めて魅了されている。

Friday, December 05, 2008

記憶をデザインするX'mas

「良いデザインというものは、まず最初は驚きの感覚、しかしすぐに全てが理解でき、再発見の喜びが続く。良いデザインとは、古くてもう忘れていた記憶や、なんねんもあっていなかった古い友人に突然またであったような瞬間と似たものなのだ」
こう語ったのは、イタリアの調理器具・ギフトグッズのメーカー、Alessi社のCEOだった。私はクリエイティブやデザインについて考えるとき、よくこのフレーズを思い出す。

経験の記憶をデザインし続けるこの企業は、その独自のデザイン手法を実践するかのように、毎年Greeting Seasonになると自社サイトをリニューアルする。まるで、Alessiの顧客達の潜在意識の表象を掬うかのように。
今回は、"Extra Ordinary Christmas"=「ちょっぴり意外な、予想外なクリスマス」。


2008年のAlessiのクリスマス・サイトは、アドヴェントカレンダー方式をとっている。
しかし、そこはAlessi。記憶の窓を1つずつ開けていく楽しみを加味させ、次の窓には何が隠れているかを、消費者側に期待させる。特に、Eveにどんなものが隠れているのかは、私も楽しみである。

ちなみに本日はこれ


記憶と経験。そこには、美学的言語を使って、既に埋没したり、失われたものを結び付け、表現していくことが求め続けられているのかもしれない。

Thursday, December 04, 2008

YouTube:21世紀に見る80年代の思考の断片

最新のBRUTUSがYouTubeの大特集をしている。


日常の中で、私はよくYouTubeで1980年代中期:阪神タイガースが日本一になり、バブル最盛期、そして若者たちの神々が話題を呼んだ時代の懐かしい映像をよく眺めている。
先日他界した筑紫哲也が編集長を務めた朝日Journal誌上で特集した「若者たちの神々」。私は高校生時代から大学学部生初期にかけて、大変注目してその特集を追いかけていた。そこに、早熟の天才と当時喧伝された「浅田彰」が登場した。彼のLogicalであり、ウイットに富んだプレゼン能力、難解な哲学的・思想的言説の巧みな編集能力に、当時の私は衝撃を受け、大変魅力を感じた。今も尚、彼の思考・関心事・言説に私は注目し続けていることを記しておこう。

記憶は不確かなのだが、1986年に金曜深夜枠で6時間連続放送された、早熟の天才が永遠と6時間語り続ける「TV・EV・BROADCAST」をYouTubeで発見した。今見ても、浅田の思考への切り口は鋭く感じ、Coolでさえある。このように、80年代のTVの深夜枠は面白い、実験的試みの番組が多くあった。

それにしても、21世紀になって80年代熱中した自身の思考の断片に出会えるなんて、YouTubeは興味深いメディアである。

では、思考機械・浅田彰が、数学、サイエンス、現代思想、哲学、物理、ハイ&サブカルチャーなど多岐に渡る事象をCritiqueし尽くすその番組をご覧あれ。

No.1


No.2


No.3


No.4


No.5


No.6


No.7


No.8


No.9

Wednesday, December 03, 2008

言葉とアート:百花繚乱展

久々に、新鮮な気持ちで現代アートと相対した。
現在兵庫県立美術館で開催されている、「百花繚乱展 2008」という127人の現代アートや陶芸家達の集合展へ足を運んでみた。



私が今まで足を運んだ展覧会とは一味違う、新進気鋭のArtist達の競演を目の当たりにし、各作品の荒削りではあるが必死の表現手段が、私の心に突き刺さってきた。実際、自宅において鑑賞してみたい作品が何点かあった。これから世界へ進出していくんだという情熱が、伝わってきた作品が多かったことに心強くもあった。


その中でも、各作品に付けられた名称の面白さに興味を持った。様相、文明の終焉、夢の遺伝子、重力都市など。一見したら、その作品との繋がりがないようであっても、その作品を創造した者が付けた名称には何らかの意志が働いたのであろうと想像しながら鑑賞するのも、また一興である。Creativeな事象と、Text Design(デザインを書く)の相関関係を考えていたので、少しは参考になったかな。

今回展示物を鑑賞して、頭に浮かんだフレーズで締めてみよう。

「われわれは決して説明を通じて芸術を経験しない。
解釈と分析はよくて知的な準備として役立つにすぎない。
けれども、それらが芸術作品と直接に触れ合うならば、
われわれを鼓舞するであろう。」

バウハウスの基礎造形教育により抽象芸術を発展させた、Moholy-Nagy, Lの言葉。

Tuesday, December 02, 2008

Web雑感

最近目に付いたWeb Communicationを幾つか紹介してみよう。

まずは、皆さんよくご存知の「MUJI」のグローバル・サイトである。


このサイトの特にメッセージ部分は、無印良品の世界市場に向けた意志を実に明快な言葉で伝えている。
「これでいい」という何の飾りもない言葉から見えてくる無印良品の意志が印象深く残る。「これがいい」という私欲から離れ、「これでいい」という抑制や譲歩を含んだ理性で商品を選択して欲しい願いが込められている。このキー・メッセージが、多様な言語によって世界に届けられる。無印良品の存在意義というものは数々の商品やサービスで明確化されているが、言葉化することでその浸透力は数段アップするであろう。

お次は、京都で450年の歴史を誇る、京友禅の名店「千總」のサイトである。ここはもちろん京友禅として有名な店ではあるが、世界中のトップ・ファッション・デザイナー達が千總ならではのファブリックを探しに来ることでも知られた存在。アパレル業界で確固たる地位と伝統、革新性と歴史性を持ち合わせた老舗が世界へ向けて発信するのはまさに日本の「美」。



このblogでも紹介した、伊藤若冲の「動植綵絵」を使ってみたり、江戸時代の美意識が反映された絵画が各所で表現されている。サイトの動きもなかなか面白い。こういった伝統や美を伝える表現もあるんだと感心させられたが、京都にあるWEB制作会社にこの手法を取れるとこってあるんだろうか。それが疑問だ。
この千總にまつわるこぼれ話を1つ。以前、私は知り合いのファッション・クリエーターの方に連れられて、千總の姉妹店である「總屋」で色々お話を聞かせて貰ったことがある。總屋のプロデューサーの方と1時間ほど対話した中で、その方が日本のセレクトショップで異彩を放つ「VIA BUS STOP」の基礎を創造される中で洋服文化に疑問を抱かれた話、そこから和の世界への転回など、実に興味深い話を拝聴したことを思い出した。そのような発想豊かな人材を抱える千總の組織力・洞察力が、このサイトからは滲み出している。

まだ私のアンテナに引っかかったサイトはあるのだが、それらは次回以降のお楽しみということで。

Monday, December 01, 2008

天体が見せる造形美

天体=宇宙というものは、時としてクリエイティブなモノを見せてくれる。
本日の午後7時前後、神戸の夜空にSmile Markが以下の写真のように顔を覗かせた。


今回のSmile Markは、今年2月にも姿を現した金星と木星の接近による現象から創造された。
そこに、下弦の月が付加されてSmile Markのように我々には見えた訳。

皆さんも多忙な中で、夜空を見上げて「その形は何を表すか」って考えてみるのも一興ですよ。

Thursday, November 27, 2008

ライブとしての肉体性

最近文芸誌は売れていないと聞く。
私はその時流に反して、よく文芸誌を買う。文芸誌にはタイムリーな批評や小説が掲載されるんで、表現や思考のプロセスに役立つことが多い。
今回、文芸誌の1つ「新潮」を手にしたのだが、驚いたことに付録が付いていた。文芸誌では初のことじゃないかな。1枚のCDが付加されていて、それは著名な批評家・小林秀雄の講演録であった。


私は最近、小林秀雄のテクストを読み返すことが多い。時代が混沌としているからなのか、昭和初期から旺盛に批評活動を行っていた小林秀雄から激動の中での思索という部分を見つけ出そうかとしているように。小林秀雄を読んだことがある人なら理解できると思うのだが、彼のテクストは結構難解なモノもある。

しかし今回、小林の講演というライブの声を聴きながらこのblogを書いていると、気付いたことがある。実に明快な語り口で、不思議なことに彼の思考が頭にダイレクトに入ってくるのだ。活字で読む小林秀雄と、声で聴く小林秀雄とでは、印象が全く違う。かつて小林の友人・青山二郎が、「なぜ喋っている時の面白さが文章に出ないのだ」と表現したことが頷ける。

今回「新潮」の中で、脳科学者・茂木健一郎氏と小林秀雄の孫・白洲信哉氏が対話してるのだが、茂木氏はその中で小林の肉声による講演を聴いて、「批評の肉体性」を感じ取ったと述べている。上手い表現である。
別に文学や評論だけでなく、音楽、アート、陶芸、なども含め、やはり現場に出かけ、聴く・見る・触るというライブ感というものが重要なのだということを再認識させられた。

テクストの中では読み取り難い行間が、小林秀雄の肉声による身体性・肉体性によって、感じ取れた気がする。私は自分のアンテナを鈍化させないために、これからも外部に出て行き、多様な肉体性に触れて行きたい。

Wednesday, November 19, 2008

日本的「美」を考えてみる

先日書店でいつものように書籍を物色していると、1つの面白い書籍に出会った。
それは、平凡社から出ている「日本の美100」。
梅原猛、磯崎新、横尾忠則達選者25人が、1人4つずつ日本の美について挙げて考察する趣向である。


この書のカバーには、これでもかと言うぐらいの満開の桜の写真で飾られている。これも、もちろん「日本の美」の1つではあろう。

「日本の美」という大文字の「美」をこの本は示そうと試みてはいるが、やはりそこに掲載されている「美」は多様なモノ、事象、思想の断片を寄せ集めたに過ぎないことは仕方がないことなのかもしれない。「日本の美」と限定はしてみても、個々人が思い浮かべる「美」は人それぞれ違うモノになるのは当然である。

では、私自信にとっての「日本の美」とはなんだろうかと、考えてみた。
昨年、伊藤若冲の代表作「動植綵絵」が、「釈迦三尊像」と共に展示されるという秀逸な展覧会へ足を運んだ。会場となったのは、京都・相国寺。120年ぶりの代表作同士の遭遇に立ち会うことができ、漠然とではあるが、「ああっ、これは本当に美しい」と体感した。特に、若冲の描いた「動植綵絵」は、何とも表現できないタッチ、書き込み、繊細さ、線の躍動感に満ちていた。私の主観ではあるが、今まで鑑賞してきたどの絵画よりも私は魅了されたのだ。




しかし、これが私にとっての「日本の美か?」と問われると、ちょっと待てよと思ってしまう。青山二郎がその著作「眼の哲学 利休伝ノート」の中で述べた千利休の飽くなき美を追究する思想にも共感してしまう。北大路魯山人が追求した書、陶芸、美食を統合した姿勢も「日本の美」の1つではないのか。


こう考えてくると、やはり私はあのフレーズを想い出してしまう。
そのフレーズとは、批評という体系を日本で確立させた小林秀雄の「当麻」(「モオツァルト・無常という事」所収)という短いテキストの中にある。能の体系者・世阿弥が美というものをどういう風に考えたかを表現したフレーズ、「美しい『花』がある、『花』の美しさという様なものはない」。


小林はこのフレーズで「美」というものは、人それぞれが思い描く美しい建築物、自然、絵画、などがそこにあるだけだと。だから、「日本の美」のように大上段に構えて、一言で表現したり、選択することはできないのだと。

皆さんにとって、「日本の美」と何ですか?

Tuesday, November 18, 2008

Obama Acceptance Speechから聞こえる豊穣な英語表現

オバマ時期アメリカ大統領の勝利宣言スピーチは、久しぶりに私の気持ちを高ぶらせた。
それほど、今回のオバマ演説は多様な価値観が渦巻くアメリカ合衆国の今を射抜いた表現を散りばめていた。

圧巻はスピーチの冒頭部分で、まずは実際の勝利宣言映像をご覧あれ。

Obama Acceptance Speech HQ (Part 1) 11/04 - Barack Obama Victory Speech November 4th 2008


そして、お次はテキストで、

Hello, Chicago.

If there is anyone out there who still doubts that America is a place where all things are possible, who still wonders if the dream of our founders is alive in our time, who still questions the power of our democracy, tonight is your answer.

It's the answer told by lines that stretched around schools and churches in numbers this nation has never seen, by people who waited three hours and four hours, many for the first time in their lives, because they believed that this time must be different, that their voices could be that difference.

It's the answer spoken by young and old, rich and poor, Democrat and Republican, black, white, Hispanic, Asian, Native American, gay, straight, disabled and not disabled. Americans who sent a message to the world that we have never been just a collection of individuals or a collection of red states and blue states.

特に、私は"It's the answer spoken..."で始まるパラグラフが秀逸。オバマ次期大統領が、これまで置き去りにされてきたマイノリティに光を当て、世界に対して可視化した所なんて抜群のプレゼン・センスである。
こんなに素晴らしい演説なのに、私がチェックした日本の大手メディアの翻訳には温度差があって、ちょっと白けてしまった。もっと、表現的センス=どこが今回のスピーチのエッセンス部分なのかを理解しないと駄目。
一番私なりにしっくりした翻訳は、これかな。

最後に英語を習得したい人達へ一言。今回のようなスピーチは、表現も明確だし、誰に対して何を伝えたいのかが分かり易いので、ぜひ映像とテキストを教材として英語表現の豊潤な部分を学んで欲しい。こういうホットな題材から学んでいくことこそ、生きた英語を獲得するチャンスである。

勝利スピーチの残り映像もご覧あれ。

Obama Acceptance Speech HQ (Part 2) 11/04 - Barack Obama Victory Speech November 4th 2008


Obama Acceptance Speech HQ (Part 3) 11/04 - Barack Obama Victory Speech November 4th 2008

Wednesday, November 12, 2008

欲望資本システム終焉の風景

レーガノミックス以降、アメリカは「小さな政府」を唱え、インフレと失業をいかに抑えるかに重点を置いた政策を取ってきた。しかし、その政策は思ってもいない方向へとグローバル市場を導いていくことになる。高金利、大量失業者、ドル高、企業M&Aの促進、個人投資家も参加しての株式ゲーム、などが跋扈してしまった。
政府の市場への介入を最小限にし、個人の自己責任を重視するアメリカ型経済を標榜して、各国は競って市場経済を導入した結果、0から1を産み出そうと言うような錬金術的金融工学が幅を利かせ、今回のような100年に1度の経済動乱へと追い込んでしまった。

ここには、日本も含めた世界各国の経済官僚、株主、政治家、企業リーダー全ての責任が問われているんじゃないだろうか。
20世紀初頭、フランスの哲学者アンリ・ベルクソンによって指摘されたことだが、質の問題と量の問題との混同は、世界を、また組織をマネジメントするリーダー達にとって最も恥ずべき錯誤の1つなんじゃないかな。ところが、その錯誤は、ほとんど思考の宿命であるかのように、21世紀に持ち越されてしまった。今回の欲望金融システムのように、あらゆるものを量の問題として考えておいた方がより「現実的」だという理由で、質の問題が人々の思考の地平から遠ざけられてしまうことは実に危険だ。今まで継続してきたアメリカ型金融システムでは、質の問題があっさり量の問題に置き換えられてしまう。アメリカも含めた世界の指導者たちは、この「現実的」であることの陥りがちな罠が、社会からその知的な活力を奪っていることを早く理解しなければならない。

この「現実的」であることが珍重される現象は最も多く見られる。そこでは原理は軽視され、多くの賛同者を得ることで形成されるコンセンサス(=数の論理)としての相対的な価値ばかりが重視されます。相対的な価値というものは、グローバル・マーケットがそうであるように、いつでも変化する。「現実的」であるには、社会的な通念にさからわぬことが求められるからです。現代のリーダーたちがそうであるように、その相対的な価値の変動にひたすら敏感であることは、真の意味で「現実的」なのだろうか?質の問題は、至る所で量の問題に置き換えられるしかないのだろうか?今回の金融システムの機能不全を違った視点から見つめてみると、21世紀の人類が直面しているこうした課題に置き換えることができるんじゃないかと考えてしまった次第。日本社・政治・経済は、この根源的な課題解決に有効な手段を果たして持っているのか、という不安が私にはある。

さて、ここまで今回の世界同時金融システム自壊について考えてみた。
最後に、この世界的現象が湧き上がってきた中で、Net上に映し出された現実を写真でご紹介しておこう。

まずは、10月10日ロイターが伝えた、金融危機の影響で国家的経済破綻が表面化したアイスランド。ネット競売ebayでは同日、そのアイスランドが売りに出された。

お次は、ジンバブエで起こっている世界恐慌後のような極度のインフレデノミ

この札束が、な・な・なんと100$の価値しかないなんて。。。

こういう感じで商品購入

1,000億$紙幣まで登場!!

でもその紙幣で、卵3個分の価値しかない。。。

Friday, November 07, 2008

MTV:新たな地平

80sは私にとって、Music Videoを一番どっぷり見ていた時代である。
それを牽引していたのがMTV!!


そのMTVが、以前は著作権などの関係でアメリカ国内でしか視聴できなかった数多くのMusic Videoを全世界で視聴可能にした。YouTubeなどと同様に、個人のWebやblogに動画を貼付けることもOK。
そのサービスとは、MTV MUSIC - I Want My MTV

私が当時、一番気に入っていたのは、これかな。映像的センスといい、音楽的インパクトといい、Marvelous!!

Wednesday, November 05, 2008

Histrical Change: USA to World

我々はアメリカでの歴史的瞬間=黒人初の大統領誕生を目の当たりにしようとしている。


ハワイ・ホノルルで生まれ育った、アフリカ系アメリカ人であるBarack Hussein Obama, Jrがアメリカ最高権力の座に上ろうとしている。それはアフリカ系アメリカ人のルーツと歴史を考えれば、まさに画期的である事象であろう。そして、アメリカに住むマイノリティにとっても大変モチベーションの上がることかもしれない。アメリカの各メディアが伝える開票速報も、いつもの大統領選より活気を呈している観は否めない。
それほど、マイノリティ出身の大統領が誕生する事実は、アメリカで学び、暮らした私がここ日本にいても、多民族国家であるアメリカにとっての衝撃度が体感できる。

キング牧師の余りにも有名な45年前の演説"I Have a Dream”が進化する瞬間が到来しようとしている。

現在CNNが伝える開票速報では、オバマ氏が207選挙人を獲得し、過半数まで後63に迫っている。


“Economy Most Important Issue”当然やろね。