Saturday, January 31, 2009

January's Antenna

今日で1月も終わり。
2009年になっての始めの1ヶ月が結構足早に過ぎていった感がある。
そこで、この1ヶ月の間で私のアンテナに引っ掛かった事象を、写真を交えて簡単に振り返ってみたい。

やはり今月といえば、この人であろう。
● オバマ新大統領ファミリー


オバマ大統領については、その演説、黒人初、ケネディの再来など多様なことが語られる。
しかし、今アメリカではその大統領と家族達への注目は、ファッション分野でも拡大している。
オバマ大統領はJ.CrewやBrooks Brothersなどアメリカ・ブランドがお好みだとか。

● ファッションデザイナーのプレゼン力

トム・ブラウン(Thom Browne)にとってはヨーロッパでの初コレクションが開催された。
今までニューヨークで斬新なコレクションを披露してきた彼が今回、着丈も裾丈も短いグレーのスーツにライン入りのカーディガン、重厚なウィングチップの靴にキャメル色のコートという、まさに自身の原点とも言えるスタイルを提示。
私が注目したのは、コレクションのプレゼンテーション。トム・ブラウンらしい、計算し尽くされたソフィストケーとされたものだったようだ。ミッドセンチュリー期のオフィスのようなデスクが所狭しと並べられた会場に、みな同じ服を着た40人のモデルが登場。表現するなら、「グレースーツを着た軍隊」という感じだろうか。こういう、他のファッションデザイナーとはちょっと違った見せ方こそ、他者の意識を活性化させるのだろう。

● Miracle on the River


1月16日日本時間:午前5時半頃、New Yorkとニュージャージの間を流れるハドソン川に、バードストライクが原因により飛行機が不時着した。その不時着は、「ハドソン川の奇跡」と呼ばれる。
乗客・乗員合わせて155人の命は助かった。
機長の機転の良さ、操縦術などと、運が上手く重なって、今回は大惨事を免れた。
しかし、この時期のアメリカ東海岸の寒さを体感したことのある私としては、良く無事だったなぁ、と感じざる終えない。それ程、この事故は奇跡に近いのだ。

● 逆チョコという発想


現在世界同時不況で、毎日暗いニュースで覆い尽くされている。
しかし、その中でも面白いことを考える企業は存在する。
その1つが、話題になってる「逆チョコ」。
ネーミング、パッケージ・デザインなどどれを取っても、思い付きそうだが思い付かない所に私は興味を持った。
写真は「DARS」&「French Milk」の逆チョコバージョンで、パッケージは、森永ロゴ、説明の文字以外が全て左右反転って言うことが分かるだろう。「日頃の感謝の気持ちを添えて、男性から女性に贈るチョコレートのこと」らしい。今年のバレンタイン・デーもあと少し。

● NHKが面白い

クローズアップ現代「危機後の世界をどう築くか~ダボス会議からのメッセージ~」

現在開催中の「ダボス会議」主催者:クラウス・シュワブ氏が提唱する“Global Corporate Citizenship”に、世界同時不況語の世界システム再構築の基本思想になり得ると感じた。

Top Runner:アートディレクター・森本千絵

私が注目するクリエイターの1人、森本千絵が出演し、自身の発想の源泉、アートワークに関する仕事術などを語った。そこに、クリエイティブの楽しさが画面から伝わり、興味深い構成になっていた。

爆笑問題のニッポンの教養:建築家・西沢立衛

西沢立衛、この名を知らない人もいるかもしれないが、彼は私の中で大変注目している建築家の1人である。
彼の思考=家族のあり方と建築、価値観の多様化における建築様式の変貌、未来における建築、の「今」を、爆笑問題とのディベートの中で、深く抉り出されたことに好感が持てた。

このように、今NHKが私の中ではホットである。ドキュメンタリーには以前から定評があったNHKだが、最近ではダイアローグ番組に大変私のアンテナが触れる。

● 革命家の出現を待ち望んでいるのか?


原題:Che: Part One
監督・撮影:Steven Soderbergh スティーブン・ソダーバーグ
出演:Benicio Del Toro ベニチオ・デル・トロ、Demian Bichir デミアン・ビチル
製作国:2008年スペイン・フランス・アメリカ合作映画
上映時間:2時間12分

1月の私の一押し映画である。
凄く淡々と物語が流れていく、そのアナログ的な映像が当時のキューバ革命への情熱を表現していて、なかなか良かった。チェ・ゲバラのキューバ革命前から革命成功までへの道程をリアルに描いている。
特に、ゲバラがキューバ革命後、国連総会で演説するシーンがあるのだが、その部分は実際にゲバラが映像の中で演説しているかのように思わせる。それほど、ゲバラ役のベニチオ・デル・トロの演技がキラリと光っていた。
あと気になったのは、私がシガー好きなこともあるのだが、映像に登場するゲバラが吸ってるシガーは何であったのかということ。コイーバなのか、それともモンテクリストフなのか。。。シガーの香りも映像から漂ってきそうに感じた。

さて、2月はどんな事象が私のアンテナに届くのか、楽しみにしておこう。

Thursday, January 29, 2009

プリンシプルと美意識の交錯

現在神戸・大丸で開催中の「白洲次郎白洲正子展」に足を運んだ。


何より私を驚かせたのは、白洲夫妻が暮らし、思索し、対談した場所:「武相荘」(ぶあいそう・武蔵と相模の境界にあることに因んでいるとか、白洲次郎の性分である無愛想から名付けたとも言われる)の一室を、インテリアなどもそのままに再現したセクションを中心に展示会が構成されていた所である。

展示会カタログ


そのリアルな生活空間の周りには、白洲次郎が関わった憲法改正草案要綱や、GHQとの遣り取りをしたレター類などの歴史的ドキュメント。スタイリッシュな白洲次郎が愛用したHERMESのクロコダイル製アタッシュケース、Louis Vuittonのトランク、イッセイ・ミヤケに特注した裏地がミンクのコート、ヘンリー・プールでオーダーしたスーツやジャケット類などが整然と展示されていた。ただ、日本で初めてジーンズを穿いたと言われる白洲次郎愛用のジーンズがなかったのは少し残念ではあるが。
また、リアルな美を愛した白洲正子が、自身の目利き力で収集した桃山時代(日本史上最も美術や文化が爛熟した時代)を中心とした陶磁器や書画。と思うと、北大路魯山人の焼き物があったり、鎌倉時代の仏像があったりと、実にユニークで、多彩な美の饗宴!!

吉田茂の懐刀として日本の戦後復興を助けた前期・白洲次郎、東北電力会長や様々な企業の取締役として高度経済成長の原動力となった中期・白洲次郎、そしてカントリー・ジェントルマンとして田舎から中央政財界に睨みを効かせた後期・白洲次郎。その全てがコンパクトに表現された展示会であった。
小林秀雄や青山二郎など一級の知識・文化人達から薫陶を受け、「形」を見る眼=目利き力を鍛錬された白洲正子の広範な美意識が垣間見られた展示会であった。

私はそれら展示物を鑑賞しながら、危機に瀕している現在の世界や日本の状況を、動乱の時代を疾走した白洲夫妻が生きていたらどのように評したのかを聞いてみたくなった。たぶん白洲次郎なら、この貪欲な高度資本主義をプリンシプルのないイズムであると言い放ったかもしれないが。。。。

白洲次郎関連展示物



白洲正子関連展示物

Monday, January 26, 2009

今こそ未来予想図=シナリオを描く瞬間

世界は未だ混沌とした中にある。
この状況からの脱却には、どう短く見ても2~3年のスパンを必要とするだろう。
こんな時こそ、私が以前このblogでも述べた不確実時代のシナリオ・プランニングの重要性を再確認するべきであろう。シナリオ構築の手法については、先のblog記事を読んでいただければ分かると思うので、本日は割愛しますね。

このシナリオ構築に関しては、危機の後の自分達のあるべき姿を描き、その姿に向かって今から準備するために有効である。欧米社会では着々と、優秀な組織では昨年前半ぐらいから、構築準備に取りかかっている。
日本ではなかなかこういう手法を取り入れている組織が見えてこないのだが、あのHONDAがシナリオ思考に近い形である映像をWeb上に公開している。


題して、“Mobility 2088”。タイトルからも分かるように、なんと80年後の世界を語るというモノ。ヴィデオの最初では、皆8年後の世界を語ると思っていて、80年後って聞いて驚きから始まる。
そのヴィデオ映像には、世界の各ポジションで働くホンダの社員&有識者などが、各々の視点で未来を語る。
「人工衛星を使った発電システムがエネルギー不足を解消」「自動車を所有すること事態がなくなる」などなどが、7分ちょっとのヴィデオで提起される。そこには、答えは存在せず、未来へ向けての多様なヒントが散りばめられている。そこを注視して、見て貰いたい。そうすると、シナリオ=未来予想図ってのは、結構柔軟に思考できることが明確になると思いますよ。

このヴィデオ映像は、“Dream The Impossible”のメッセージで終わるのだが、これはHONDA創業者の本田宗一郎氏の思想:「未来のことを考えないと、未来へ向けての物作りはできない」を色濃く反映している。この思考がないと、今回のような試みはできないであろう。

いずれにしても、シナリオ思考は今後、政治、経済、文化、などの様々なシーンで必要となってくるであろう。日常の中でも、個々人が未来を想定した考えを磨き、組織へと反映して行けば、その組織は活性化されるであろう。

早く目覚めよ、日本企業!!

Wednesday, January 21, 2009

歴史は刻まれた

アメリカ合衆国第44代大統領が就任した。
私はCNNのライヴで、オバマ大統領のInauguration and Addressに耳を傾けた。
彼の口から発せられる言葉、フレーズが、その場に集った数百万の聴衆の熱気と相まって、化学反応を起こしているように感じられた。そして、彼の世界へ向けたメッセージは歴史に刻まれたのだ。

では、その化学反応の全容を振り返ってみよう。

President Barack Obama 2009 Inauguration and Address


彼の選挙キャンペーン当時からのキーワードである、“Yes, we can”、“Unity”、“Change”が就任演説の中には散りばめられていた。
しかし、私が注目したのはキーワードではなく、彼が発したフレーズである。

例えば、
“It's the answer spoken by young and old, rich and poor, Democrat and Republican, black, white, Hispanic, Asian, Native American, gay, straight, disabled and not disabled - Americans who sent a message to the world that we have never been a collection of Red States and Blue States: we are, and always will be, the United States of America. ”

“I will ask you join in the work of remaking this nation the only way it's been done in America for two-hundred and twenty-one years - block by block, brick by brick, calloused hand by calloused hand.”

“The true strength of our nation comes not from our the might of our arms or the scale of our wealth, but from the enduring power of our ideals: democracy, liberty, opportunity, and unyielding hope.”

“We will respond with that timeless creed that sums up the spirit of a people.”

などのフレーズが私の中にダイレクトに入ってきた。

彼の力強い演説によって、確実にアメリカはNew Dawnを迎え、歴史は動き、そしてアメリカ自体を一歩前進させた。その一歩は大変困難な一歩かもしれないけれど、いずれにしても前に一歩踏み出さなければ何も変わらない。
お次は、日本が一歩を踏み出す番なのだが。。。。

Tuesday, January 20, 2009

Essence of Creatives

I write today's blog in English entirely.
There may be such a day.

I will write about authentic article having having a practised eye power.
It is time to be excited for a creative person, organization, and so forth, very much now.
Clearly there are so many unknowns facing us, so many challenges from social changes to business failings to economic collapse. It is expected that the unemployed people increase almost every day.

Under this situation, how dare anyone look at the world with any optimism?

No one can deny the global pain this is all afflicting. But for better or worse, this is creating a self-editing process of talent, brands, organizations and leaders. What is authentic and more importantly, and what is innovative will survive and grow. It is the foundation for any prominent design or brand without only with an individual to be faithful in this way. The future selection may get narrow; however, what creatives must do is to make sure the choices become better.

The meanings of words called “originality” are evolved by technology and a new generation of youth. But, it became difficult to define a concept called the original. Especially, It may be difficult in Japan which has made it a cultural trait to improve and enhance on previous ideas.
But somehow, there are still advantage on the merits of what we once described as“original.”

In the early morning of tomorrow, we look at the historic moment which the inauguration of first African-American US president becomes reality. A phenomenon doing enable impossibility; in other word, the act of making something has a greater value today than ever before.

Having creative thinking for ascertain essence must be opening up the times!!

Saturday, January 17, 2009

Requiem: Kobe from Without Sound to With Sound

生粋の神戸っ子である私にとって今日という日は特別な日である。
あの阪神大震災から、14年の歳月が流れたが、1.17には街中が悲しみに包まれる。


1995年1月17日には、私はアメリカで暮らしていた。
やっと電話が繋がった電話の向こう側で、神戸の両親はこう言った。
「神戸から音が消え去ったみたい」と。

あの日から14年を経た神戸には、様々な音が蘇り、私はポートピアホールで行われたニューイヤー・コンサートに出向いた。
女性指揮者として世界でもどんどん実績を積み重ねている西本智実が大阪フィルハーモニーを振るというので、是非一度は聴いておこうと思った。



曲目:
* J.シュトラウスⅡ世/喜歌劇「こうもり」序曲
* J.シュトラウスⅡ世/ワルツ「春の声」
* J.シュトラウスⅡ世/アンネン・ポルカ
* J.シュトラウス/ラデツキー行進曲
* エルガー/行進曲「威風堂々」第1番
* チャイコフスキー/バレエ「眠りの森の美女」より“ワルツ”
* デュカス/交響詩「魔法使いの弟子」
* ストラヴィンスキー/バレエ組曲「火の鳥」(1919年版)
などが演奏された。
特に「威風堂々」は、私がアメリカ大学院の卒業セレモニーで、このサウンドに導かれて入場したことから特別な楽曲となっている。
本日の演奏は、女性指揮者ならではの繊細さと、女性らしからぬ雄大な指揮とが、大フィルの音が実に見事な統一感を与えていた。

こういう音に溢れた街として神戸が未来へ向けて発展していくことを、私は大フィルの奏でるサウンドを聴きながら感じた。
そして、あの震災で尊い命を失った数多の人々に、私は鎮魂の祈りを捧げ続けた。

Friday, January 16, 2009

頭の上のお洒落

ロラン・バルトは、自著「モードの体系」の中で次のように述べている。
「衣服とは裸体をまさに隠しながら誇示しようとする」と。

では、頭もそれ自体を隠しながら誇示しようとするお洒落ってのもあるんじゃないかと思う。
そこで、私自身の頭を隠しながら誇示してくれる帽子達をここで紹介してみよう。

ブルーグレーのBorsalino

このBorsalinoは、神戸で帽子といえばここと言われる神戸・元町にある神戸堂で購入したモノ。
帽子好きなら一度は憧れる世界で最も有名といっても言い過ぎではない「ボルサリーノ」。1857年にジュセッペ・ボルサリーノ氏によってイタリア、アレッサンドリアの地にフェルト帽の芸術的職人だけを集めた工場を
設立したことから歴史が始まった。今では、約150年と言う年月を経たブランドとして確固とした地位を構築。
ラビットファーで仕上げられたこの逸品こそ頭上のお洒落として、その存在感を誇示するモノであろう。

unrivaledとRESONATEとのコラボレーションによるウールハット


Silver Ringがツバに付加された、デザイン性に富んだハット。ヒョウ柄の耳当てを付けアレンジされた部分のデザインに魅了された。

kangol×fragment design


kangol×fragment design×村上隆


創業70年を迎えた英国の老舗帽子メーカー・kangolと藤原ヒロシ率いるデザイン集団:fragment designのコラボレーションによるハンチング。ホワイト・ハンチングはkangol×fragment design×kaikaikiki(村上隆)のトリプル・コラボレーションによるモノ。これは、伝統、藤原ヒロシ的リアルクロージング思想、そして現代アートの先端を行く村上隆が創造した1つの作品である。

knagol×COMME des GARCONS JUNYA WATANABE MAN

ジュンヤワタナベもkangolと共演。歴史性と斬新性の融合は次世代型ハンチングを創造する。

父親から継承したkangol


このように、私は歴史、伝統、革新などのキーワードを頭上にまとい、今後も歩み続けていく。

Wednesday, January 14, 2009

スタイルとしての「キャンプ」

先日留学時代の友人と久々に会い、食事を共にした。
その時、その友人が発した言葉に私は気持を動かされた。
その友人は米国でイノベーション・コンサルタントをやっているんだけど、彼との会話でビジネス・モデルを評価するとき何を重要視するかという議論になった。彼の意見として、「その企業なり組織ならではのスタイルにおいて見抜く」というのだ。
簡単なことではないが、企業や組織のビジネス・モデルというモノには、経営者の意志やビジョン、その企業に集う人々の情熱、企業のコア・コンピタンスなどなどが凝縮されている。その意味から、総合的スタイル=ブランド価値を見抜ければコンサルティング・ワークもスムーズに進むことは理解できる。

私が興味を持ったのはビジネス的見地ではなく、彼が発した「スタイルにおいて見抜く」と表現した部分にである。
この表現を聞いて頭にすぐ浮かんだのは、スーザン・ソンタグが自身の著書「反解釈」の中で述べていた概念についてである。「この世には名付けられていないものがたくさんある。そしてまた、名付けられてはいても説明されたことのないものがたくさんある。その1つの例が、その道の人々の間では『キャンプ』という名で通用している感覚である。これは紛う方なく近代的な感覚であり、ソフィスティケーションの一種ではあるが、必ずしもそれと同一ではない」というテクストで示した「キャンプ」こそその概念である。
皆さんは、「キャンプ」と聞いてアウトドアの遊びと考えてしまうかもしれないが、それは誤りである。
「キャンプ」という概念でソンタグが提起したかったのは、その道の人々の間で通用する感覚=自らを他と区別するバッジ=他者との差異性ではなかったか。
ライフ・スタイル、ビジネス・スタイル、ファッション・スタイルなど、「~スタイル」と表現される事象は、全て他者と何らかの差別化を図る言葉ではないだろうか。

こう考えると、最初に友人が言った言葉「スタイルにおいてその企業の本質を見抜く」ということにも納得がいく。今度ビジネス・ミーティングの席で、A企業とB企業はどちらが「キャンプ」ですかと、問いかけてみようか。
いずれにしても、ソンタグが40年前に唱えた「キャンプ」という概念は、多様な事象のスタイル=本質において見抜くという態度がますます重要になっている世界で、今一度見直されるべきではないだろうか。

最後に、「キャンプ」の代表の1人であろうこの人物の声を■D\(^^
William S Burroughs

Friday, January 09, 2009

My Favorite Text is “Move Around・・・・”

皆さんにも、好きな言葉、フレーズ、テクストなどがあると思う。
私にも、心に、精神に刻み込んでおきたい言葉やテクストが存在する。

今日久々に、スーザン・ソンタグの「良心の領界」を仕事の調べ物で読み返していた。
この書は、2004年に亡くなったソンタグの最後のテクストとも言える。
その中の「序・若い読者へのアドバイス・・・」に私の精神にドシッとくるフレーズが記されている。


ソンタグは、「動き回ってください。旅をすること。しばらくのあいだ、よその国に住むこと。けっして旅することをやめないこと。もしはるか遠くまで行くことができないなら、その場合は、自分自身を脱却できる場所により深く入り込んでいくこと。時間は消えていくものだとしても、場所はいつでもそこにあります。場所が時間の埋め合わせをしてくれます。」と語る。
私は11年前に日本に戻ってくるまでの間、長期間アメリカで暮らし、学び、異文化を体感し続けた。
その私にとって、このテクストはまさにその体感したことを表現してくれてるかのようだ。

共感と模索の間を漂いながら、アメリカと世界を交通していたソンタグはこうも述べる。
“Comfort isolates.”(安寧は人を孤立化させる)
“Solitude limits solidarity, solidarity corrupts solitude.”(孤独は連帯を制限する、連帯は孤独を堕落させる)

Thursday, January 08, 2009

バッハ・ブラームス・グールド・坂本龍一

今年初めてのCD購入。
その作品とは、「Glen Gould ~Ryuichi Sakamoto Selection~」。
坂本龍一が自身のセレクトによる、天才・グールドの珠玉の演奏を集めている。


私が初めてグールドのピアノに出会ったのは、高校生の頃。その時の衝撃は言葉ではなかなか表現できない。
彼が奏でる、ワグナーのマイスタージンガーをオーケストラではなくピアノのみで聞かせる演奏家がこの世に存在することに驚かされたのだ。

今回のアルバムを創造するにあたって坂本はこう述べる。「グールドが弾くバッハは、僕にとって、まるで作曲家自身が弾いているかのように、正確だ。また同時に、僕は彼の弾くブラームスをこよなく愛している。いったいどうやって、彼は若くしてあのような深い瞑想性と沈静なるメランコリーを獲得してしまったのだろうか」と。

坂本龍一は聴くが、グールドは聴かない。そういう方は、一度グールドが奏でる音に耳を傾けてみて欲しい。その静かではあるが、力強いグールドがピアノから創造する音は、バッハやブラームスを敬遠していた人をも虜にしてしまうだろう。

Tuesday, January 06, 2009

25年と250年

今日耳に飛び込んできたニュースには若干驚かされた。
あの世界的に知られるアイルランドのメーカー、ウォーターフォード・ウェッジウッド(Waterford Wedgwood)が経営破綻したというのだ。

この企業は創業250年の歴史を誇り、イギリス王家御用達で「クイーンズウェア(女王の陶器、Queen's Ware)」という異名を持つ高級陶磁器とクリスタルガラスを創造してきた。そのブランド力は相当強固なモノがあったはずだが、戦略的イノベーションを怠ってしまったのかもしれない。最近でも、ウェッジウッド社は低価格の硬質陶器を発売するなどの戦略を取り、陶磁器メーカーとして世界のトップシェアを争っていたが、21世紀に入って中国などアジアの陶器メーカーとの価格競争で相当疲弊していたようだ。

私は祖父や父親から受け継いだ、ウェッジウッドのネクタイピン、カフスリンク、クリスマス・プレートを所有している。特に、亡き父は現役時代よくウェッジウッドのネクタイピンやカフスリンクを愛用していた。
その想い出を巡らせると、今回の破綻には少し寂しさを覚える。

あの歴史あるブランドまでもが破綻する現状を分析する専門家達は、昨年から継続している世界的金融危機の延長線上にある欧州経済の単なる悪化を論じるかもしれない。しかし、私の考えとしてはそんな単純な話しではないように感じるのだ。もちろん、世界的景気後退は影響しているだろうが、それは単なる一局面で、ウェッジウッド社の経営戦略としての発想力欠如、イノベーション欠如が経営破綻に直接響いているように思うのだ。

今回の破綻劇とは現状対極に位置するであろう有名企業が、今年自社製品を市場に流通させ始めて25周年を迎える。
その企業とは、Apple社である。


Apple社も創業から経営危機に見舞われ続けた歴史を持つ企業である。しかし上記の25年間にAppleが創造したコンピューターが網羅された年表を眺めていると、この企業の飽くなきイノベーション力による、斬新性、デザイン性などを追求し続けている。今では、iPodという戦略商品によって、音楽コンテンツ市場を席巻し、そのビジネス発想のストレッチに成功している。

私自身も、アメリカ大学院時代には、爆弾マークに困惑しながらMacintosh PowerBookによって修士論文を書き上げ、日本に戻ってからも当時デザイン力を売りにしていたiMacを使用し、現在でもiPodで音楽を楽しんでいる。ウェッジウッドとは業界が違うので比較は難しいが、ウェッジウッドとアップルの差異は(私を含む)消費者を魅了する製品&サービスと、それらを創造するイノベーションの相違にあるのではないか。

25年と250年、現在の複雑怪奇な世界市場の中で生き残るためには単なる歴史の積み重ねだけでは駄目で、歴史を色褪せさせない発想とイノベーションをベースとしたブランド構築が一層求められていると言うこと。
私も今回はウェッジウッド破綻というタイムリーな話題の中で、ブランド構築を生業としていた1人として考えさせられることが多かった。

いずれにしても、ウェッジウッドの再建に名乗りを上げる企業が早く出てきて欲しい。

Sunday, January 04, 2009

戦後思想界の巨人が語る現在

世界視線を持って時代と相対してきた思想家・吉本隆明が久しぶりにTVに登場している。
今その番組を見ながら、このblogを書いている。


この正月はDVD鑑賞や読書三昧だったので、久々にTVを見ていることになる。
私は吉本氏の著書を幾つかは読んでいるものの、彼の熱心の読者ではなかった。
しかし、戦後日本の言論界をリードしてきた、小林秀雄亡き後の戦後思想界の巨人が今何を語るのかが興味深かった。

その番組「吉本隆明 語る ~沈黙から芸術まで~」は、私が当初考えていたモノとは少し色合いが違った。
画面に映し出された吉本氏の姿は、車椅子で、凄く弱っている感じを受け、郷愁を誘う。
しかし、2千人の聴衆を前に3時間熱く語りかける「芸術言語論」には力があり、文学や芸術のみならず、政治・経済、国家、宗教、家族や大衆文化まで、人間を巡る事象を論じてきた往年の吉本氏の姿がそこにはあった。

彼の思想のエッセンスにもう少し耳を傾けてみようか。

Saturday, January 03, 2009

読書初め2009

まずは、この写真を見て貰いたい。

Hard Working Man

これは、TimeのPictures of the Year 2008に掲載された、時の人・オバマ氏がスピーチを考えている姿。
このように、写真はその時々、一瞬一瞬の歴史的事象や人などを切り取る。

新年も3日が経ち、ちょっと活字が懐かしくなり、杉本博司が著した「現な像」をじっくり読んでみた。


写真家でもあり、国際的美術家でもある杉本氏が著した書物には、彼自身の時間や歴史の捉え方が鮮明に表現されている。杉本は語る「私は長い間写真に関わりながらも、未だに真の何たるかを知ることを得ない」と。

人類社会にとって、「世界の見え方」が180年ほど前に大きく転換した。それは、写真が発明されたからで、刻一刻と変化していく世界の表情=留まることを知らない捕らえ所のない世界が、ファインダー越しに収まることによって、時間が止まり、時間の断片と化す。
以前読んだスーザン・ソンタグの著書の中で、写真を収集することは世界を収集することに繋がるという趣旨のことを述べていた。デジタル技術の発展と、その技術の恩恵に授かる総アマチュア化。今回の杉本の著作には、世界がどんどん矮小化され、画像として蓄積され、アーカイブ化されていく異様な光景に対しての警鐘も含まれている感じがする。

「現な像」としての写真、その写真が示す世界の見え方が今後一層重要度を増す中、このテクストは読んでおくべき。

Friday, January 02, 2009

とあるギャラリーからの贈り物

毎年お正月になると、とあるギャラリーから送られてくる干支の色紙。


そして、いつものように色紙に描かれた干支の絵に言葉が添えられている。
「悠然と歩む『牛』の足には力が漲り、角を具えた表情に情熱を秘め、黙々と汗して働く姿に信頼感が溢れる。今も豊穣のシンボルであり続ける『丑』は、人間の暮らしを支えている」
この色紙に添えられた言葉の通り、激しい変化を予感させる新たな年に、私も大いなる豊穣を目指して歩んでいこう。

Thursday, January 01, 2009

遠くで汽笛を聞きながら迎えた2009年

いよいよ2009年の元旦を迎えました。
皆さんは、どんな元旦をお過ごしでしょうか?
ここで新年のご挨拶を本来なら行うところですが、喪中につき挨拶はご遠慮させていただきます。
ただ、このblog読者の方々の2009年のご多幸をお祈り申し上げます。
本年も今までと変わらず、宜しくお願い致します。

2009年の幕開けは、神戸の自宅から聞こえる神戸港からの汽笛を聞きながら始まりました。
この音色をいつも聞くとき、神戸で暮らすことの幸せを覚えます。

元旦の朝は、お節と昨晩から泊まりに来ている弟夫婦、そして姪っ子の花音ちゃんの顔を眺めながらお屠蘇をいただき、2009年の素晴らしい幕開けを迎えられたかな。

我が家のお節

そして、ホンマにCuteなのんちゃん

神戸の自宅から見える元旦の神戸風景